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SMA材を中心とするJISの耐候性鋼について

  • 特殊鋼コラム
SMA材を中心とするJISの耐候性鋼について

今回はSMA材を中心に、JISの耐候性鋼について書きます。

耐候性鋼についてはCOR-TENに関しても掲載していますのでぜひそちらもご覧ください。今回は、JIS材に絞って解説していきます。


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JIS耐候性鋼

JIS耐候性鋼板の中で、最も汎用的なのはJIS G3114の「溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材」です。主に橋梁に適用されますが、建築用途にも使用されることもあります。他に、耐候性を重視したJIS G3125の「高耐候性圧延鋼材」JIS G3140の「橋梁用高降伏点鋼板」の中にも耐候性熱間圧延鋼板があります。


橋梁など公共性の高い用途には、JIS材の使用が前提となります。JIS材であることを証明したミルシートが必要とされるのが一般的です。


JIS G3114の制定は1968年、JIS G3125は1971年、JIS G3140は比較的新しい2008年に制定されています。いずれも1930年代に実用化されたCOR-TENの耐候性の思想を取り入れて成分が制定されたものになります。

耐候性鋼の種類

表1には耐候性鋼の種類と板厚などをまとめています。板厚はかなり厚いところまで制定されています。耐候性自体は表面にできる緻密な保護性の錆で錆を抑制するため、錆びない内部は耐候性能を有する必要はないのですが、強度部材として使うためには内部の材質も重要なためこのようになっています。

表1 JIS耐候性鋼の種類

主な化学成分

表2に成分規定を示します。

耐候性に有効な元素はP、Cu、Ni、Crがメインでありこれらの含有量を規制するのがポイントです。その他の元素は、強度、靭性、溶接性などの品質を確保するための規制になります。Pは大量に添加すると耐候性にとっては有用な元素なのですが、靭性、溶接性に悪影響するため、積極的に添加しているのは、SPA-HとSPA-Cに限られ、板厚の上限も規制されています。


ここで、JIS G3114のSMA○○○○WとSMA○○○○Pの違いについて解説しておきます。


JIS規格には「Wを付した鋼材は、通常塗装しないか又はさび安定化処理を行って使用する。P付した鋼材は、通常、塗装して使用する。」とあります。このことからもわかるように、耐候性鋼の基本的な使用方法は、無塗装、さび安定化処理(これも塗装ではないことから無塗装の1種です)、塗装の3種類あることになります。


もともと耐候性鋼は表面に緻密で安定な保護性の錆を形成させ、腐食の進行を遅らせるのが目的ですから、無塗装での使用が本来の使い方になります。


一方、耐候性鋼に塗装するのは塗装の疵部からの剥離の進展が遅くなる効果を見越したもので、塗装の残っている部分には耐候性は必要ないことから、表2にあるように、若干耐候性効果のある元素を減らし、合金コストを下げています。


しかしながら、橋梁など公共性の高い物件では耐候性鋼に塗装するのは2重の防食になるため好ましくないと判断された例があるとかで、最近ではPを付した鋼材(SMA490APなど)は殆ど使われなくなっています。


公共物件以外では、耐候性鋼に塗装する例も多くありますしメリットも出ています。この用途の最たるものは、コンテナです。コンテナのほとんどがCOR-TEN又はSPA-Hに塗装して使われています。

表2 主な化学成分(wt%)

耐候性鋼の溶接性

表3には溶接性を示す、炭素当量(Ceq)溶接割れ感受性組成(Pcm)の規制値を示します。参考にJIS G3106の溶接構造用圧延鋼材のSM材の規制値も示します。多少、上下はありますが、同クラスで比較した場合、大きな違いは無いことがわかります。


これは、耐候性元素として合金は添加されますが、その分、強度調整のためにCやMnを低減していることによります。このため、耐候性鋼の溶接性は普通鋼と大きな差は無いと考えられます。また、JIS G3140のSBHS材はPcmが低く抑えられており、溶接性もより改善した鋼材になります。

表3 耐候性鋼の溶接性

JIS耐候性鋼の機械的性質(引張試験)

表4は耐候性鋼の引張試験の規定値の一部を記載しています。ここも、参考にJIS G3106の溶接構造用圧延鋼材のSM材の規制値も示していますが、同等材で比較するとSMA400クラスはTSの上限がやや広くなっているのと、SMA490クラスの降伏点がやや高くなっているのがわかります(降伏点はSM490Y相当)。また、JIS G3140のSBHS材は降伏点が高くて、板厚によらず一定であるという思想で作られています。

表4 JIS耐候性鋼の機械的性質(引張試験)


機械的性質(シャルピー衝撃試験)

表5にはシャルピー衝撃試験の規定値を記載しています。対象は板厚12㎜を超えるものになります。板厚12㎜以下で規定がないのは、板厚が薄いと構造物の拘束が強くないという理由もありますが、もともと板厚が薄いと靭性は良好になる方向なのであえて試験しなくても、それなりの靭性は有しているとの考えによるものと思われ、決して靭性が必要ないということではありません。


JIS G3114の規定は、ほぼJIS G3106に倣っています。JIS G3125のSPA-Hでは靭性は規定されていません。Pを大量に含んでおり、靭性は良好ではありませんので、用途には配慮すべきです。JIS G3140では、試験方向が、どちらかというと靭性の良くない、圧延直角方向で要求されていますし、吸収エネルギーも100J以上とかなり高くしています。橋梁用のかなり高級な鋼材と言えます。

表5 耐候性鋼の機械的性質(シャルピー衝撃試験)
JIS G3106 (板厚>12㎜)

耐候性鋼を橋梁に適用する場合の注意点

鋼材を道路橋に適用する場合、技術基準として「道路橋示方書」というものがあります。この中に、「鋼板の厚さはJIS G3193を適用するが、(-)側の許容差が公称板厚の5%以内にならなければならない。」という内容の規定があります。


板厚9㎜だと-0.45㎜以上が必要なのですが、一般的な公差は、例えば±0.65㎜であり、下限を下回ってしまう可能性があるため、下限を限定する必要があります。特に市中品は±同じ公差で製造されたものが多く、実績を確認する必要があります。これは耐候性鋼に限らず普通鋼でも同じです。


さらに重要な注意点は、耐候性鋼で保護性の錆が育成されるためには、塩分が蓄積することなく、適切な乾湿が繰り返されることが必要だということです。


このため、「道路橋示方書」などで、無塗装で適用できる地域が提示されています。実際の適用可能環境は、個々の地形等でも異なるため、個別に評価することが必要です。

耐候性鋼の溶接について

耐候性鋼には専用の溶接材料が必要です。溶接部も母材と同じように耐候性がないと溶接部だけ保護性さびが形成されず腐食が進んでしまうためです。


表6に溶接材料の一覧を示します。日鉄溶接工業(株)、(株)神戸製鋼所より販売されています。SPA-Hには専用の溶接材料はありませんが、SMA490用の溶接材料を流用する形になります。

表6 耐候性鋼用溶接材料

以上、JISに規定された耐候性鋼について紹介しました。

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※この記事の内容は当社見解でありすべてを保証するものではありません。製品のご購入や加工などの際は当社を含めた専門業者への確認と目的・用途に応じた検証の上、当該材料をご使用ください。

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