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カーボンニュートラル、日本の政策・日本製鉄の方針・そしてクマガイ特殊鋼の取り組みについて vol.1

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カーボンニュートラル、日本の政策・日本製鉄の方針・そしてクマガイ特殊鋼の取り組みについて vol.1

今回から、カーボンニュートラルについて紹介します。

はじめに

日本のCO排出量に関し、電力部門で約35%を占めます。また、産業部門の中で鉄鋼業は最大排出業界であり、日本全体の約14%を排出しているということです。


鉄鋼業は生産量が多いことに加えて、そもそも鉄を生産するために鉄鉱石の還元という方法をとっており、これが現状では石炭を利用するためCOの発生を前提にしたものであるからです。

鉄鋼業のCO2排出について

鉄鋼業、特に高炉メーカーのCO排出についてもう少し詳細に紹介します。

そもそも高炉は、地球上にふんだんに存在する鉄の酸化物である鉄鉱石を還元して、鉄を生成しています。
この還元の際、石炭(炭素約80~90%)から作るコークス(ほぼ炭素)を大量に使用しています。


還元の結果としてCOを大量に排出しています。反応式を単純化して記載すると下記のようになります。


Fe2O3(鉄鉱石)+3CO(コークスから生成) →2Fe(溶融鉄)+3CO2(二酸化炭素)


この高炉で発生するCO2含め、鉄鋼1トン当たりのCO排出量は2トン弱と言われています。鉄鋼は大量に生産されているのですが、その生産量の倍近いCO排出を余儀なくされているのです。


地球温暖化が叫ばれ、その原因として温室効果ガスであるCOが取りざたされるようになり、この削減は避けて通れないものになっています。

日本のカーボンニュートラル政策と日本製鉄の方針

日本政府は2030年度に2013年度の46%削減、2050年までにカーボンニュートラルを目指すとしています。

これに呼応するように、日本製鉄は2030年に2013年の30%削減(約1億トンから7千万トンに)、2050年までにカーボンニュートラルを目指すとしています。
「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」より


高炉法は、木炭を使って15世紀頃に始まったとされており、改良を重ね現在に至っているもので、最も効率的な鉄の製造法です。日本では1857年に釜石で高炉が作られています。

COの排出を抑えるため、この伝統ある製法を根本から見直すのですから、生半可な対策でかなうものではありません。2050年はまだまだ先のようですが、高い技術の壁を考えると余裕のある話ではないように感じます。

日本製鉄のカーボンニュートラルに向けた取り組み

前述の通り、カーボンニュートラルは重い課題ですが、日本製鉄は積極的に取り組もうとしています。具体的には、超革新技術開発が必要な下記案を中心に考えられています。

  1. 大型電炉での高級鋼製造
  2. 高炉水素還元製鉄
  3. 100%水素直接還元プロセス

これらについて、紹介していきます。

1.大型電炉での高級鋼製造

一般的な電炉についてはすでに使われていますが、CO削減のために高炉メーカーが大型の電気炉を導入しようとするものです。


高炉の生産量の一部に代わる生産を賄うには、生産性を考えると非常に大型の電炉が必要になります。


電炉を1チャージ150tonから倍増の300tonレベルに大型化する場合の課題としては、炉内全体を均一に早く撹拌することが難しくなることや、生産性を上げる必要があることです。


特に後で述べる還元鉄を電炉に利用しようとすると、さらに効率の低下が懸念されています。また大型電炉で高炉並みの高級鋼を製造しようとすると、スクラップから混入する不純物元素の除去または無害化が必要になります。

この際、電気炉に使用する電力がCO排出量の多いものでは削減に限界があるので、カーボンフリー電力を使う必要もあります。


もともと電炉はCO排出量としては、高炉法に比べ少ないとは言われていますが、すべてを電炉に置き換える訳にはいきません。なぜなら、電炉は鉄スクラップを活用しますが、リサイクルだけでは世界の鉄鋼需要の増加分に対応できないからです。増加分は鉄鉱石からの生産が必須です。


そのための方法が、次の高炉法での水素還元製鉄になります。

2.高炉水素還元製鉄

これは、従来の高炉という設備を活用しつつ、コークスの代わりに水素を使って鉄鉱石の還元を行おうとするものです。

反応式を単純化して記載すると、下記のようになります。


Fe2O3(鉄鉱石)+3H2(水素) →2Fe(溶融鉄)+3H2O(水蒸気)


前に記載した従来法と比べると、ここではCOは出てきません。


しかしながら、大きな課題があります。その一つは、従来法の反応が発熱反応であり、反応が進むと温度が上がり反応がさらに進みやすいのに対し、水素還元は吸熱反応であり、反応を進めるためには熱を加え続けないといけないことです。


その熱源に炭素由来のものは避けないといけませんが、少量のコークスは使用せざるを得ないようです。また、加える水素自体も加熱しないと反応が進みませんが、水素は爆発のリスクもある気体なので特別な技術が必要になります。


その他にも、ブレイクスルーが必要な技術が山積しているようです。

コークスに比べ、水素のコストが高いことも課題です。大量に使われるカーボンフリー水素を安く調達できないと海外との競争に勝てません。

一部のコークスに代わって、水素を活用してCOを削減する技術は2008年頃から検討されていますが、15年経って小型の試験高炉での実証実験が行われたところです。2050年に向けて残り27年、大型の高炉での水素還元は、まだまだ簡単にいく話ではなさそうです。

3.100%水素直接還元製鉄

3つ目の水素直接還元について紹介します。

これは、低品位の鉱石ペレット(鉄鉱石の粉末を丸く固めたもの)を直接還元炉(シャフト炉)に入れ、還元剤に水素のみを加熱して付加することで還元するものです。


反応式自体は、上の高炉での水素還元製鉄と同じになります。この方法で得られる鉄は、高炉法のような溶銑(溶けた鉄)ではなく、ペレット状のままの個体になります。このため、鉄鋼製品にするには、電炉、高炉などで改めて溶融させ、成分を調整する必要があります。

この技術も、実用化までにはまだまだ解決しないといけない課題山積です。


以上の3項目などに加えて、COが排出されてもそれを回収して地中に埋めたり、他の物質に変換して利用するCCUSと呼ばれる方法も加味して、カーボンニュートラルを目指すとしています。


以上、2050年のカーボンニュートラルに向けて、技術開発費、新規設備投資など費用は莫大になることが想定されますが、お客様の理解や政府の支援も受けながら、日本製鉄は覚悟を持って進めていくようです。


上記内容は、「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」2021年3月30日を参考に記載しています。正確には、当該資料を参照ください。

日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050説明会資料


一方で、日本製鉄はすでに進めているCO削減を達成した量をもとに、低CO鋼材をNSCarbolex® Neutralという名称で提供しています。

少し価格は高くなるようですが、脱炭素化の動きを受けて脱炭素に貢献している鋼材を利用していただくことで、脱炭素化の取り組みに関与していることが、第三者の証明書をもって認識されることになります。

NSCarbolex® [エヌエスカーボレックス]

vol.2ではクマガイ特殊鋼の取り組みについてご紹介

ここまで、鉄鋼業やメーカーである日本製鉄の取り組みについてご紹介いたしました。


vol.2では、CO排出削減に貢献する切断機や水素ガスの導入、具体的な削減量など、クマガイ特殊鋼の取り組みや今後の方針について詳しくご紹介しています。

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