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ミルシートとは?鋼材検査証明書の意味・記載内容・見方をわかりやすく解説【Vol.1】

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ミルシートとは?鋼材検査証明書の意味・記載内容・見方をわかりやすく解説【Vol.1】

ミルシートとは、鋼材の品質を保証する「鋼材検査証明書」のこと。正式名称・英語表記から、記載項目、成分・寸法欄の読み方まで、鉄鋼専門商社が実例つきで解説します。

熊谷憧一郎(くまがい しょういちろう)
クマガイ特殊鋼株式会社 代表取締役社長。1977年生まれ、愛知県出身、成蹊大学経済学部卒業。2000年に大手総合商社へ入社し、ステンレス鋼材の販売に4年間従事。その後、現在の会社に入社し営業・加工技術の実務経験を積み、2013年より現職。特殊鋼販売技師の資格を有し、特殊鋼材の販売・加工に一貫して携わるプロフェッショナル。また会社代表として特殊鋼販売技師や加工技師などのプロ社員集団を束ねる。


ミルシートとは、製鉄所が鋼材を出荷する際に発行する品質保証書「鋼材検査証明書」の通称です。鋼材の規格・成分・機械的性質の実績値が記載されており、その鋼材が規格を満たしていることを証明する重要な書類です。本記事では、ミルシートの正式名称や記載内容、実際の見方までを、特殊鋼専門商社の視点でわかりやすく解説します。機械的性質の記載や効率的な管理方法については、続くVol.2でご紹介します。

1.ミルシートとは(語源と正式名称)

ミルシートは、製鉄所を表す「ミル」と紙を表す「シート」を重ねた和製英語です。ミル(mill)とは、粉を挽いたり、圧延機で鋼材を圧延することですが、圧延で鋼材まで作っている製鉄所のことをミルと呼びます。

ミルシートの正式名称は、「鋼材検査証明書」です。英語では、「INSPECTION CERTIFICATE」や「MILL CERTIFICATE」などと呼びます。

ミルシートは、製鉄所が鋼材を出荷するときに別途商社に提出されます。私たちのような商社から入手するのが基本ですが、市中での取引の場合は、販売店などがミルシートの中の、この鋼材だということでマークして配布する場合もあります。

2.ミルシートの記載内容と保証内容

ミルシートには、以下のような基本事項が記載されます。

  • 注文者
  • 契約番号
  • 証明書番号
  • 需要家名
  • 注文サイズ
  • 商品名
  • 規格

などの基本事項に加え、その製品独特の製品番号、製鋼番号などが記載されます。その上で『成分の実績』『機械試験の実績』などが記載されます。

機械試験としては、規定で定められた『引張試験』『曲げ試験』『シャルピー衝撃試験』などの結果が記載され、いずれも規格の範囲内であることが保証されています。

ミルシートを見ただけでは、本当にその実績値が規格に入っているかはわかりませんので、本当に規格通りになっているかを確認するには、規格を参照して対比することが必要になります。実際には、製鉄所の品質保証責任者のサインと印鑑があり、満足していると保証しているので内容まで確認することは少ないかもしれません。

よりチェックしやすくするために、「規格値の上下限をミルシートに記載してもらう。」ということもできなくはありません。

3.ミルシートの実績値の見方

ミルシートに記載される実績値は必ずしその製品そのものを試験した結果とは限りません。試験の頻度は規格ごとに決められており、同一ロットの中から代表で試験した結果が、載せられることになります。従って複数のミルシートで同じ数値が並ぶ場合もあるのです。

ミルシートからは、規格に対してどの程度の余裕を狙って製造しているか、数値のばらつき、複数規格に対する成分の共通化の仕方など、さまざまな情報を読み取ることができます。メーカーごとに見比べてみるのも面白い視点です。

4.問い合わせ時に必要な情報

ミルシートの内容について問い合わせる際は、証明書番号または契約番号(製鉄所によっては受注番号・注文番号と呼ばれる場合もあります)を伝えるとスムーズです。

一方、ミルシートに記載された鋼材そのものについて問い合わせる際は、製品番号(ロール番号と呼ばれることもあります)が必要になります。用途に応じてどちらの番号を控えておくべきか、覚えておくと実務で役立ちます。

5.ミルシートの寸法欄の見方

図1に例を示すミルシートの寸法についてですが、あくまでも注文された寸法であり実績値ではありません。
鋼板の場合、厚さ×幅×長さで表します。単位は基本的にmmですが海外向けなどではごくまれにインチやフィートで表すものも有ります。その場合は、数字の後に「“」や「‘」が付きます。これも、理解はしやすいと思います。なお員数は個数のことで、鋼板の場合枚数に相当します。

図1ミルシートの寸法記載例
図1 ミルシートの寸法記載例

6.ミルシートの化学成分欄の見方

次に化学成分ですが、一例として図2に示します。

基本の5元素であるC(炭素)、Si(シリコン)、Mn(マンガン)、P(リン)、S(イオウ)を始めとして、添加された元素等が記載されます。分析結果が通常「%」で表記されます。重量での百分率です。

通常は溶けた状態の溶鋼での分析値になりますが、要求によっては鋼板から採取した製品分析値も記載される場合もあります。その場合は分析区分などの欄に記号が入ります。それらは欄外の注釈(NOTES)などに説明されています。

分析数値は小数点を含むそのままの数字で記載される場合もあるのですが、何倍かして整数値で表記されることが多いです。例えば、×100の表記がある欄に17という数値があれば、100倍してその数値になるということを示していますので、もともとは0.17%ということになります。×1000の欄に4とあれば、0.004%ということになります。この倍率は小数点以下の有効桁数にも相当しています。

×100や×1000の代わりに、1/100や1/1000という表記になっている場合があります。1/100の欄に17とあると、その数値を1/100倍すると成分率になるということを示しており、やはり0.17%のことです。

成分の欄には、成分から計算され溶接性を表すPcmやCeqなどの数値が記載されることもあります。計算式自体もミルシートに記載されるのですが、ミルシートに記載されている数値そのもの、前の例でいうと「17」をそのまま代入しても数値が合わない場合があります。

特に×100以外の有効桁数になっている元素が混在していると合いません。これは、PcmやCeqはあくまでも個々の元素の%を前提にした計算式であり、ミルシートの各元素を%に換算した値で、計算しないといけないことによります。ミルシートでは最終計算結果の数値も×100などとして整数値化して表記される場合が多いです。

また、成分の記載は、2行に渡っていることもあります。図2の例で言うと「Ti」や「Pcm」が上段に記載されています。
なお、化学成分に肝心の鉄「Fe」が載っていませんが「Feの中にこのような元素が入っています」という表現になっているためです。記載以外の元素はほぼFeであると理解してください。
「金」ではどれだけ純金に近いかが価値ですので、金の純度が表記されるのですが「鉄鋼」では、鉄の純度よりもFe以外の各元素の添加量で性能が大きく影響を受けるので、このようになっているのだと思います。

図2ミルシートの化学成分記載例
図2 ミルシートの化学成分記載例

7.よくあるご質問(FAQ)

Q.ミルシートは何のために必要なのですか?
A.鋼材が発注した規格通りの品質(成分・強度など)を満たしていることを証明するための書類です。受け入れ検査や品質トレーサビリティの記録として使用されます。
Q.ミルシートは英語で何と呼びますか?
A.一般的に「INSPECTION CERTIFICATE」や「MILL CERTIFICATE」と呼ばれます。
Q.ミルシートはどこで入手できますか?
A.製鉄所から商社へ提出されるため、通常は購入先の商社(クマガイ特殊鋼など)を通じて入手します。市中取引の場合は販売店がマークして配布することもあります。
Q.ミルシートに記載の数値は、実際に購入した鋼材そのものを測定した値ですか?
A.必ずしもそうではありません。試験頻度は規格で定められており、同一ロット内の代表サンプルを試験した結果が記載されるため、複数枚のミルシートで同じ数値が並ぶこともあります。
Q.化学成分欄の「×100」「×1000」という表記は何を意味しますか?
A.記載されている整数値をその倍率で割ると実際の成分値(%)になることを示しています。例えば「×100」欄の「17」は0.17%を意味します。


次回Vol.2では、ミルシートの機械的性質(引張試験・衝撃試験など)の見方と、ミルシートを効率的に管理する方法についてご紹介します。

https://www.kumagai-steel.co.jp/product/2023/5842/

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