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ミルシートの見方【機械的性質編】引張試験・衝撃試験の数値の読み方を解説【Vol.2】

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ミルシートの見方【機械的性質編】引張試験・衝撃試験の数値の読み方を解説【Vol.2】

ミルシートに記載される引張試験・シャルピー衝撃試験の数値はどう読む?降伏点・引張強さ・伸びの見方から、紙管理をなくすデジタル管理の方法まで、鉄鋼専門商社が解説します。

【監修者】 熊谷憧一郎(くまがい しょういちろう)
クマガイ特殊鋼株式会社 代表取締役社長。1977年生まれ、愛知県出身、成蹊大学経済学部卒業。2000年に大手総合商社へ入社し、ステンレス鋼材の販売に4年間従事。その後、現在の会社に入社し営業・加工技術の実務経験を積み、2013年より現職。特殊鋼販売技師の資格を有し、特殊鋼材の販売・加工に一貫して携わるプロフェッショナル。また会社代表として特殊鋼販売技師や加工技師などのプロ社員集団を束ねる。


Vol.2では、ミルシートに記載される機械的性質—引張試験・シャルピー衝撃試験・曲げ試験—の数値の読み方と、紙管理から脱却するためのミルシート管理のポイントを解説します。「ミルシートとは何か」から知りたい方は、先にVol.1をご覧ください。

https://www.kumagai-steel.co.jp/product/2023/5740/

1.引張試験欄の見方

機械試験の主なものは『引張試験』と『衝撃試験』です。まずは引張試験について解説します。

ミルシートの冒頭には、試験片の採取位置(鋼板の先端か後端か)が記載される場合があります。使用者にとって直接役立つ情報ではありませんが、規格によっては両端での試験が求められるものもあり、区別が必要になるケースがあります。

また、試験片の採取方向(圧延方向か、圧延直角方向か)も記載されます。引張試験はどちらの方向でもよいとされることが多い一方、ボイラ・圧力容器用の規格では圧延方向と直角方向の両方が指定されており、規格通りに試験していることを示す必要があります。

厚内位置(板厚方向のどこから試験片を採取したか)が記載されることもあります。全厚のまま引っ張る場合もあれば、板厚の1/4の位置から採取する場合もあり、後者では丸棒形状の試験片になるのが一般的です。

さらに、引張試験では標点距離(GL)が記載されます。試験片の形状(丸型か平型か)や標点距離によって伸びの絶対値が変わるため、試験片の条件を考慮せずに伸びの数値だけを比較しても意味がありません。これらの表記は英数字の記号で示され、意味は欄外のNOTESに説明されています。

たとえば、位置記号「T」(圧延先端)、方向記号「C」(圧延直角方向)、厚内記号「Q」(板厚の1/4)、「GL1」(丸型・標点距離50mm)という条件の場合、その結果として降伏点(または耐力)が366N/mm²、引張強さが536N/mm²、伸びが35%、といった数値が並びます。

なお、「降伏点」か「耐力」かは明示されないことも多く、一般的には降伏点が明確に生じる場合は降伏点を、生じない場合は耐力を採用します。

※【ミルシートの記載例を図3に示します。】

2.シャルピー衝撃試験欄の見方

シャルピー衝撃試験も基本的な見方は引張試験と同様ですが、方向や板厚位置に加えて試験温度も記載されます。試験方向は圧延方向と規定されることが多いものの、協定によって変更が許される場合もあります。

結果は、3本の試験片それぞれの吸収エネルギーの数値と、その平均値が記載されます。たとえばJIS G3106では、組試験としてのシャルピー衝撃試験は3本の平均値の最低基準しか明記されていませんが、実際にはJIS G0404が引用されており、平均値が基準を満たしていても、個々の値が規定値の70%を下回ると追加試験が必要になる規定があります。

具体例として、位置記号「T」(圧延先端)、方向記号「L」(圧延方向)、厚内記号「Q」(板厚の1/4)、サイズ記号「F」(10mm角)、試験温度0℃という条件の場合、152J・165J・127Jの個々の3点の結果と、148Jという3点平均値が記載されます。

※【ミルシートの記載例を図3に示します。】

3.曲げ試験・その他試験欄の見方

曲げ試験は省略されることも多い試験ですが、実施される場合は合格を示す「A(Acceptable=合格)」などの文字で結果が表されるのが一般的です。試験方向は指定のないことが多く、その場合は圧延直角方向に試験片を採取するのが通例です。

このほか、熱処理後の試験結果やその他の機械試験結果が記載されることもあります。機械試験ではありませんが、寸法検査や外観試験の合格結果が、ミルシートの片隅に小さく記載されていることもあるので、あわせてチェックしてみてください。

なお、規格の内容によって記載項目は変わり、フォーマットも製鉄所ごとに異なります。普段はじっくり見る機会が少ないミルシートですが、実にさまざまな情報が詰まった証明書です。

※【ミルシートの記載例を図3に示します。】

図3 ミルシートの機械的性質記載例

4.ミルシート管理でよくある課題

ここからは、ミルシートの管理・保管方法についてご紹介します。

DXの進展でデジタル活用による効率化が進む一方、ミルシートの受け渡しは依然として紙やFAXなどアナログな方法が残っている企業も多いのではないでしょうか。アナログ管理には、次のような課題があります。

  • 保管方法のルール整備・順守が必要で、属人化しやすい
  • 保管場所が増えていく
  • ミルシートを探すのに膨大な時間がかかる
  • 1か所でしか閲覧できず、都度コピーして送付する必要がある

原紙受領後にスキャンしてデジタル保管している企業もありますが、データの共有や検索性が十分でなく、ほぼアナログ管理に近い手間がかかっているケースも少なくありません。また、ようやくメールなどでデータを受け取れても画像ファイルのままで、製品番号などのテキスト情報が検索できないという課題もよく聞かれます。

5.デジタル管理システム「MSS」のご紹介

紙やFAX、画像データでしか提供されないことも多いミルシート。市販のパッケージソフトは初期費用・ランニングコストが高額で、導入にも時間がかかりがちです。

クマガイ特殊鋼では、こうした課題を解決するために「早く」「安く」「カンタン」をキーワードに、自社でミルシート管理システム(MSS)を開発し、社内で運用しています。

受領・保管までの工数は紙管理とほぼ変わりませんが、検索性や共有のしやすさには圧倒的な差が生まれます。製品番号はもちろん、自社独自のロットナンバーや受注ナンバーなど任意の情報も合わせて登録できるため検索性が高く、Web経由で複数人によるデータ共有も簡単です。あわせてOCR処理によるデータ化も行っていますが、フォーマットのばらつきや文字の小ささなどから、読み取り精度100%の実現は現状難しい部分もあります。

クマガイ特殊鋼では、お客様はもちろん同業者の方に向けても、このミルシート管理システム(MSS)をご提供しています。最短2週間での導入も可能です。リモートワークが当たり前になった今、デジタル化の第一歩としてミルシート管理から検討してみてはいかがでしょうか。

https://www.kumagai-steel.co.jp/wp/wp-content/themes/kumagai-steel/assets/doc/common/mss.pdf

6.よくあるご質問(FAQ)

Q.降伏点と耐力の違いは何ですか?
A.降伏点は応力-ひずみ曲線上で明確に降伏現象が現れる場合の値、耐力は明確な降伏点が現れない材料で用いる代替指標(0.2%耐力など)です。規格や材料によりどちらが採用されるか異なります。
Q.シャルピー衝撃試験の結果はどのように読めばよいですか?
A.3本の試験片それぞれの吸収エネルギー(J)の個別値と、その平均値が記載されます。規格によっては平均値だけでなく、個々の値が規定値の70%を下回っていないかも確認が必要です。
Q.曲げ試験の結果はミルシートのどこに記載されますか?
A.実施される場合、多くは合格を示す「A(Acceptable)」などの文字で簡潔に記載されます。試験方向の指定がない場合は、圧延直角方向で採取されるのが一般的です。
Q.ミルシートをデジタル管理するメリットは何ですか?
A.紙・FAX管理に比べて検索性が大幅に向上し、複数人でのデータ共有も容易になります。製品番号やロットナンバーなど任意の情報を紐づけて登録できるため、必要なミルシートをすぐに探し出せます。
Q.ミルシート管理システム(MSS)の導入にはどのくらいの期間がかかりますか?
A.最短2週間程度での導入が可能です。

クマガイ特殊鋼では

シャルピー衝撃値が保証された極低温用鋼や高張力鋼板などを豊富に在庫しています。

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