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さびで錆を防ぐ? 耐候性鋼板 COR-TEN®︎とは vol.1

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さびで錆を防ぐ? 耐候性鋼板 COR-TEN®︎とは vol.1

このブログは特殊鋼のスペシャリストであるクマガイ特殊鋼が、業界ビギナーから百戦錬磨のベテラン社員さん等に向けて、特殊鋼に関する基礎知識はもちろん「なるほど!」と思っていただけるようなまめ知識など、楽しく情報収集していただけるブログを不定期で更新しております。

耐候性鋼板 COR-TEN® | 製品情報 | 創業1913年 鋼板・鋼材の専門商社|クマガイ特殊鋼株式会社

※この記事の内容は当社見解でありすべてを保証するものではありません。製品のご購入や加工などの際は当社を含めた専門業者への確認と目的・用途に応じた検証の上、当該材料をご使用ください。


今回からは耐食鋼の中でも、一部の人には比較的なじみのあるCOR-TENについてお話します。

COR-TENって

「COR-TEN」は米国のUS Steel社(以降USSと表記)が開発した高張力耐食鋼の名称です。1920年代に各種成分が検討され、1930年代に製品化がなされました。同じころ日本でもUSS社により商標登録されています。
Corrosion Resistance and Tensile strengthから来たものだと思います。

耐食性とともに抗張力も高いものになっています。販売開始からもう90年くらい経っています。成分の特許は切れていますが、商標は現在も生きています。特許は日本では20年で切れるのですが、商標は更新すれば永遠なのです。


「コルテン」というカタカナ表記も1980年代に商標登録されています。「コールテン」と呼ばれることもあります。USSは世界主要各国に特許および商標の使用許諾を行い、日本では1960年ころ富士製鉄(現 日本製鉄)が実施権者(ライセンシー)となりました。それ以降、国内では日本製鉄が製造販売しています。


COR-TENは世界共通のブランド名となっています。HPを見る限りでは、USS自体はすでにCOR-TENの製造は行っていないようです。一方で、日本では60年以上が経過しましたが、大量の製造実績と改善により今でも売れ続けています。


COR-TENは各種耐食鋼としての用途もありますが、基本は耐候性鋼として使用されます。

耐候性鋼「COR-TEN®」について

耐候性鋼は、気候に耐える鋼材ということです。屋外の大気中使用に対して効果を発揮します。


鋼材の弱点はさびるということです。これは、もともと地球上に安定に存在する鉄の酸化物(鉄鉱石)を還元という方法で無理やり金属鉄にしているため、もとの安定な酸化物に戻ろうとする現象です。さびるのは鉄の弱点なので、普通は表面に塗装したり、メッキしたりしてさびないようにしているのです。


ところが耐候性鋼はこのさびを利用して、表面はさびるけれども内部までのさびの進行を抑えている特別な鋼材です。



耐候性鋼は鋼中に、リン(P)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)などの合金を微量添加することによって、表面にできるさびが緻密で密着性のあるものになるため、水や空気の浸透を抑制し、内部のさびの進行が抑えられるのです。さびが塗装の代わりをしているようなイメージです。

この保護性のある緻密なさびは一朝一夕でできるものではなく、雨などで濡れたり乾いたりを何度も繰り返すうちに、数年かけてできていくものです。


初期のさびは一般の鋼材と差は見られません。また、健全な保護性のさびも完全に水を遮断するものではないので、さびの進行がゼロになるわけではありませんが、構造物の寿命に対し無視できるレベルになります。


一方、海岸に近い地域では一般の鋼材でも腐食が激しいのと同じように、耐候性鋼も塩分の高い地域では保護性のさびができにくいため、COR-TENの使用にも制約があります。この点に関しては後述いたします。


なお、さびにくい鋼材としてステンレスがあります。これは合金としてCrを11%以上含むもので、COR-TENのような低合金鋼とは異なる分類の耐食鋼になります。

COR-TEN鋼のさびの色

COR-TEN鋼も初期さびは一般鋼と同じように黄さびになります。1日でさびが発生することもあります。何年もかけて濡れたり乾いたりを繰り返すうちに、だんだん濃くなっていき、茶色からさらに重厚なこげ茶色に変化していきます(日本製鉄 COR-TEN®カタログ参照ください)。

ご自宅用の活用事例(クマガイブログより)

2021年3月
2021年6月


黄さびのうちは、まだらになる場合もあってきれいとは言えないのですが、だんだん落ち着いた濃い茶色に変化していきます。
山の中などにある橋梁では植物の緑とのコントラストが自然にマッチしているように感じるのはひいき目でしょうか。


余談ですが、耐候性鋼の橋と隣接した塗装された鋼橋では、耐候性の橋の方にだけ鳥が巣を作っているのを見たことがあります。鳥も人工的な化学物質である塗料よりも自然界に存在するさびの方に親しみを持つのかもしれません。塗装しないことからも、エコでCO2の削減にも寄与できている鋼材とも言えます。


COR-TEN鋼は多くの芸術家、建築家の方にも愛されており、多様な建築物(例えば写真1)、モニュメント、作品が作られています。COR-TEN鋼を扱ったことのある人は、その魅力に取りつかれることが多いように思います。

写真1 COR-TEN®の使用例:施設名(島根県立古代出雲歴史博物館)

COR-TEN鋼の使い方(無塗装、表面処理)

前にも書いた通り、COR-TEN鋼は長期にわたって乾湿を繰り返すことによって、きれいなさび色に変化させていくことを前提にしていることもあって、初期にはショットブラストなどにより表面の黒皮を剥がしてしまうことが一般的です。


熱延材では酸洗という方法もあります。冷延材はすでに黒皮がありませんので、そのままで使えます。黒皮のまま使っても黒皮の部分はさび化が遅れるだけで、鋼材の腐食量としては問題ないのですが、さび化する部分と黒皮部分の外観が異なってしまうので、見た目からもなるべく全体を均一にさびさせた方が好ましいと思います。


一方で、ショット面などは非常にさびやすいので、水に濡れるとすぐに初期さびが発生します。この初期さびの状況は一般鋼と同じで黄色くまだらになりやすく、あまりきれいとは言えない場合があります。また、保護性のさびができるまでに、流れさびと言われるさび汁によって周囲にさび色がついてしまうこともあります。


これらを避けるために開発されたのが耐候性鋼の表面処理で、さび安定化補助処理と言います。被膜を使うということでは塗装に似ているのですが、塗料が空気、水の遮断でさびを防いでいるのに対して、この処理は被膜からわずかに空気、水が浸透し被膜下でさび化が非常にゆっくりと進展するという方法です。


被膜がさびに吸収されて完全に消失していくまで、場合によっては何十年かかることもあります。この間、生成してきたさびと残存被膜が外観上混在する期間があり、まだらに見えるため景観上問題になる場合があります。保護性さびの機能はありますので、腐食量としては問題ではないのですが、景観上許されないときは、上から被膜の簡易再生処理することも可能です。

COR-TEN鋼の使い方(塗装)

COR-TEN鋼は、保護性のさびを生成させるため無塗装で使用するのが基本なのですが、COR-TEN鋼を塗装して使う場合があります。


塗装被膜の劣化は太陽光による劣化のみならず、塗膜が傷ついたり薄くなった部分からさびが発生し、そのさびが膨らんで塗料の更なる剥離を生じていくことで、塗料が剥げた部分が大きくなって再塗装が必要になる。というパターンがあります。


ところが下地がCOR-TENだと、部分的にさびが発生してもその部分でさびの進展が遅く、塗膜に対するダメージが少ないため、さび発生の面積が広がりにくいのです。

このため、塗り替え周期が長くなるので塗り替え費用を削減でき、トータルの費用が安くなるというメリットを享受できます。

耐候性鋼板 COR-TEN®︎ いかがでしたでしょうか。


次回vol.2では耐候性鋼のメリット、規格や化学成分、溶接などの加工時の注意点について解説いたします。


COR-TEN®︎ 活用事例をブログで紹介しています。

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