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さびで錆を防ぐ? 耐候性鋼板 COR-TEN®︎とは vol.2

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さびで錆を防ぐ? 耐候性鋼板 COR-TEN®︎とは vol.2

このブログは特殊鋼のスペシャリストであるクマガイ特殊鋼が、業界ビギナーから百戦錬磨のベテラン社員さん等に向けて、特殊鋼に関する基礎知識はもちろん「なるほど!」と思っていただけるようなまめ知識など、楽しく情報収集していただけるブログを不定期で更新しております。

耐候性鋼板 COR-TEN® | 製品情報 | 創業1913年 鋼板・鋼材の専門商社|クマガイ特殊鋼株式会社

※この記事の内容は当社見解でありすべてを保証するものではありません。製品のご購入や加工などの際は当社を含めた専門業者への確認と目的・用途に応じた検証の上、当該材料をご使用ください。


さびで錆を防ぐ? 耐候性鋼板 COR-TEN®︎とは vol.1

前回vol.1では 、耐候性鋼板 COR-TEN®︎の概要やさび色、塗装の有無による利用方法や表面処理について解説いたしました。

今回は、具体的な使い方や注意点・規格・溶接について解説いたします。

COR-TEN鋼の使い方

前回、COR-TEN鋼とはどういうものか、どうやって使うのかについて書いてきました。

COR-TENの基本的な使用方法は、無塗装、さび安定化補助処理(これも塗装ではないことから無塗装の1種です)、塗装の3種類あることになります。使い方について簡単にまとめますと表1のようになります。


塗装にしろ、無塗装にしろ、耐候性鋼採用のメリットを考えるときに景観とライフサイクルコスト(LCC)という考え方が重要になります。LCCについて、初期施工費用は一般鋼に塗装するよりも若干高くなることがあっても、何回も塗り替えをしなくて済むので、その費用が削減でき、構造物の寿命までにかかる費用をトータルすると安く済むということです。


初期に安いものを買っても修理を繰り返しているうちにかえって高くつくので、購入時少々高くてもメンテナンス費用の掛からない方を選択するというようなイメージでしょうか。


ただし、耐候性鋼で注意しないといけないのは、使用環境を間違えると(すなわち飛来塩分が高すぎる)、保護性のさびが形成されず、結局塗装しないといけなくなるようなこともあることです。


海岸線に近い地域は、適用前に検討することが必要です。適用の一応の目安として、土木研究所・鋼材倶楽部などが出した太平洋側は海岸線から2km超離れた地域、北陸・東北の日本海側は20km超離れた地域等の指針がありますが、飛来塩分が少なければこれら適用外の地域でも適用できます。

飛来塩分は風向きや地形、海抜でも変わってくるからです。


日本製鉄では100年後の腐食量を推定する技術も開発しています2)

また、COR-TENという商品名ではありませんが、飛来塩分の高めの環境に対して、ニッケル系高耐候性鋼という鋼材も開発されています。

2) 紀平寛ら:耐候性鋼の腐食減耗予測モデルに関する研究.土木学会論文集(2005).780号,p.71-86

使用法メリットデメリットLCC
無塗装通常追加のメンテナンスを必要としない(さびの状況確認は必要)初期錆(黄さび、流れさび)発生、
飛来塩分が多いと保護性さびができない
★★★
さび安定化
補助処理
初期錆の問題なし。
長期で保護性さびに移行
被膜が保護性さびに置き換わる際に不均一性が生じる★★
塗装塗装塗り替え周期が長くなる初期費用が高くなる
表1 COR-TENの使用方法と長短


COR-TEN鋼の規格

COR-TENの規格は、USSが制定しております。


COR-TENを名乗る以上、国際的にはこの規格を守るべきと思いますが、日本製鉄は表1に示すように国内向けに若干修正した規格を制定しております。耐候性能を決定する成分については遵守していますが、機械的性質については、国内向けにマイナーチェンジしているのです。

含P耐候性鋼一般耐候性鋼(50キロ)一般耐候性鋼(60キロ)
USS規格COR-TEN ACOR-TEN BCOR-TEN B-QT
日本製鉄 相当規格COR-TEN OCOR-TEN 490@COR-TEN 570
表1 COR-TEN国内規格 @にはA,B,Cのいずれかが入ります。

これまでに国内で最も販売されているCOR-TENはリン(P)を大量に含む、耐候性を重視したCOR-TEN O (コルテン オー)と呼ばれるものだと思います。USS規格のCOR-TEN Aに相当します。


COR-TEN Aは上限板厚1/2inch(12.7㎜)ですが、COR-TEN Oは上限76㎜までカタログに記載されています。しかしながら通常使われるのは12㎜以下か、せいぜい25㎜までです。COR-TEN Oは溶接部の特性を劣化させるPの含有量が高いため溶接については注意が必要です。耐候性鋼の溶接については改めて書きます。


COR-TEN Oには、厚板を含む熱延鋼板以外に、冷延鋼板、形鋼、棒鋼などがありますが耐候性成分は共通のため同様の耐候性能を持っています。


COR-TEN O以外に一般的な耐候性能を持つCOR-TEN 490とCOR-TEN 570があります。厚板を中心とした熱間圧延鋼板が中心です。COR-TEN 490とCOR-TEN 570は強度、靭性レベルの違いだけで、耐候性能は変わりありません。


表2にそれぞれの鋼種の化学成分を、表3に機械的性質を示します。


COR-TEN OはPが0.1%程度添加されています。一般鋼より1オーダー(1桁)多い感じです。最近の製鋼技術ではPは非常に低くなっていますので、添加しないといけないレベルです。インドの鉄塔が1500年以上朽ちずに持っており、これはインドの気候と当時の鉄がPが高かったためという話を聞いたことがありますが、本当なら面白いですね。


機械的性質に関しては、COR-TEN OとCOR-TEN 490は50キロクラス、COR-TEN 570は60キロクラスになります。COR-TEN OとCOR-TEN490Aは、靭性保証はされていませんが、それなりの靭性はありますので、薄手材では母材靭性が問題になることはあまりないのではないでしょうか。

表2 化学成分(wt%)
表3 機械的性質

COR-TEN鋼の溶接について

COR-TEN鋼には専用の溶接材料が必要です。溶接部も母材と同じように耐候性がないと溶接部だけ保護性さびが形成されず腐食が進んでしまいますからね。


表4に溶接材料の一覧を示します。日鉄溶接工業(株)より販売されています。溶接の際に予熱が必要かどうかは、微妙なところですが、溶材メーカーは板厚25㎜を超えると若干の予熱を推奨しています。


COR-TEN Oについては母材のPが高く、それに溶材も合わせようとすると溶接部の高温割れが起こるとともに、靭性も低下するので溶接には不向きです。

溶接して使うのは板厚13㎜未満とし、溶接は低電流、低入熱として母材の溶け込みをなるべく小さくすることが必要です。溶材はCOR-TEN 490用を流用することになります。

そういう意味では溶接部の耐候性は母材より若干落ちることになりますが、これまで問題になったことは無いと思います。


板厚13㎜以上の溶接については、メーカーは許容していませんが、実際に溶接されて使用された例はあります。強度部材として使用せず、溶接部の欠陥を検査すれば問題ないのではと思いますが、COR-TEN490を使用した方が無難かもしれません。

表4 溶接材料

COR-TEN鋼の耐候性鋼として以外の使い方

これまで書きました通り、COR-TENは耐候性鋼としての使われ方が中心ですが、特にCOR-TEN Oはそれ以外の使われ方もあります。


例えばコンクリートミキサーでは、耐食性以外に耐摩耗性がいいということで使われています。強度が50キロレベルであることも影響しているかもしれません。石炭の貨車などに使われることもあります。塵芥車などでは汚水による腐食に対して効果がある場合が認められるようです。


以上、COR-TENについて解説いたしました。よくCOR-TEN鋼のサンプルが欲しいと言われることがありますが、さびる前の状態は普通の鋼材と何ら変わりませんし、初期のさびも違いを見つけることは難しいです。


ウィスキーじゃありませんが、何年も熟成させて初めて風合いのあるさびが生成するのです。現物を見ないとさびのイメージがわかないかもしれませんが、日本製鉄のカタログ1)をご覧になって、COR-TENのファンが一人でも増えることを願っております。

前回の記事、耐候性鋼 COR-TEN®︎ vol.1はこちら!


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