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衝撃で硬くなる?磁性がない?高マンガン鋼( ハイマン、NM-13MN)とは vol.1

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衝撃で硬くなる?磁性がない?高マンガン鋼( ハイマン、NM-13MN)とは vol.1

このブログは特殊鋼のスペシャリストであるクマガイ特殊鋼が、業界ビギナーから百戦錬磨のベテラン社員さん等に向けて、特殊鋼に関する基礎知識はもちろん「なるほど!」と思っていただけるようなまめ知識など、楽しく情報収集していただけるブログを不定期で更新しております。

耐衝撃摩耗用鋼板 NM-13MN| 製品情報 | 創業1913年 鋼板・鋼材の専門商社|クマガイ特殊鋼株式会社

※この記事の内容は当社見解でありすべてを保証するものではありません。製品のご購入や加工などの際は当社を含めた専門業者への確認と目的・用途に応じた検証の上、当該材料をご使用ください。


高マンガン鋼って

今回から、ちょっと特殊な、知る人ぞ知る高マンガン鋼について書いていきます。


鋼材にマンガン(Mn)が11%程度以上添加されたものを高マンガン鋼(ハイマンガン鋼)といいます。ハイマンなんて言い方もします。(機械構造用合金鋼のSMn420などのマンガン鋼とは別ですので、混同しないようにお願いします。)


一般の鋼材ではMnは2%以下がほとんどですので、かなり大量にMnを含んでいることになります。


一般の鋼材は1000℃くらいの高温ではオーステナイト相と呼ばれる状態になっており、温度が下がるときに変態という現象で結晶構造が変化してフェライト相中心に変化します。

ある合金を大量に添加するとこの変態が起こらなくなり、常温でもオーステナイトのままになります。高マンガン鋼はこの部類になります。


クロム(Cr)、ニッケル(Ni)の大量に入ったステンレスも常温でオーステナイトのままのものが中心であり、これをオーステナイト系ステンレスと呼びます。ステンレスは文字通り、さびにくいという特徴を持ったものですが、高マンガン鋼は別の特徴を持っています。


一つは、衝撃を与えると表面が硬くなるので摩耗に強いということです。Mnが13%程度含まれます。他に、マンガンを大量に含んで生成したオーステナイト組織は靭性が非常に良好な効果があり、低温用鋼として使用されるものがあります。25%ほどMnが添加されますが、まだ実績は十分ではありません。


また、13Mnも25Mnも磁石にくっつかない非磁性鋼という特徴を持っています。磁石につかないのは、オーステナイト系ステンレスも同様です。


現在、市中で調達できる高マンガン鋼の圧延鋼板は、クマガイ特殊鋼が取り扱っている衝撃摩耗に強い13Mnのみですので、ここでは、これに絞って紹介していきます。

耐衝撃摩耗鋼板 ハイマンガン鋼 在庫表 NM-13MN

高マンガン鋼の開発の歴史と規格

高マンガン鋼の歴史は古く、1880年代にイギリスの冶金学者のロバート・ハッドフィールド氏によって発明されました。このため、ハッドフィールド鋼という呼び方をすることもあります。成分的には炭素を1%程度、マンガンを13%程度含みます。


耐摩耗鋼の紹介の時に、マルテンサイトは炭素量が高いほど硬くなるので、高グレードの耐摩耗鋼の方が、炭素量が多いことは紹介しましたが、この高マンガン鋼は変態がありませんので、焼きを入れても(急冷しても)マルテンサイトが発生することはありません。しかし、衝撃による加工誘起マルテンサイトが発生しますので、その強化に寄与していると考えられます。


一般の耐摩耗鋼の炭素量は0.3%以下くらいで、機械構造用炭素鋼のS55Cでも0.55%程度なので、1%程度というのは圧延鋼材としてはかなり高いレベルになります。


この13Mn鋼は変形させると加工硬化で硬くなるのが特徴です。表面を削ったり、曲げたり、表面に何かをぶつけて微視的に変形させるとその部分が硬くなります。初期状態の2倍以上、3倍近く硬くなることもあります。


このように、13Mn鋼は加工硬化が大きいのが特徴で、主に耐摩耗効果のある鋼材として利用されています。JIS化は1956年と古いですが、高マンガン鋼鋳鋼品(いわゆる鋳物)としてでであり、圧延鋼板としては、JIS規格は現時点存在していません。


日本製鉄は、1970年代当初から圧延鋼板として高マンガン鋼について開発を進めていましたが、1980年前後にリニアモーターカーや核融合実験装置の検討が進められており、非磁性鋼としての高マンガン鋼が注目され、各社開発に拍車がかかったようです。


この頃、日本製鉄では13Mn、25Mnなどの高マンガン鋼が実用化されております。

先に記載の通り、日本には13Mn鋼の圧延鋼板の規格がないので、日本製鉄は独自に規格を制定しています。規格名はNM-13MNと言います。最初のNMは、非磁性鋼のNon-Magnetic Steelの頭文字からとったものと想像します。13MNは文字通り13%Mnからでしょう。規格内容は公開されておりませんのでここには記載しませんが、基本は先に書いた通り、炭素1%とマンガン13%を含有する成分保証鋼です

13Mn鋼の耐摩耗性

13Mn鋼は物がぶつかる衝撃により表面が硬化し、摩耗が減少する特徴を持つので小さな粒が表面を動いてごく表面が徐々に摩耗するスクラッチング摩耗よりも、比較的大きな岩石がぶつかって削り取られるガウジング摩耗などの方が効果が大きい鋼材です。

ハイマンイメージ
Pixabayからの画像

小さい砂が常に流れて、ごくわずかずついつの間にか減っているという場合はむしろ苦手で、どんどん物がぶつかって減っていくような場合の方が得意なのです。条件があえば、ブリネル硬さ500級の耐摩耗鋼よりも良好な耐摩耗性を示します。

13Mn鋼の製造法

13Mn鋼は炭素量が高いので、圧延ままでは鋼中に炭化物が多数存在することになります。これは鋼材をもろくする原因になりますので、一旦、高温に加熱して炭化物を溶解したのち、再び発生しないように素早く水冷する水靭処理(溶体化処理とも言います)という方法を取るのが一般的のようです。


このような処理をしているので、良好な靱性が確保できるのですね。


普通、このような高温から水冷すると焼きが入るのですが、先に書いた通り13Mn鋼は変態せずに常温までオーステナイトのまま冷やされますので、この処理では硬化しません。従って、母材ままの状態では、硬さもそれほど高くありません。

また、13Mn鋼はオーステナイト系ステンレスと同じように磁石にくっつかないので、マグネットハンドリングしている普通の厚板工場では製造できず、特別な設備が必要になります。製造にもいろいろノウハウがあるのですね。

高マンガン鋼(ハイマンガン、ハイマン)vol.1の まとめ

高マンガン鋼開発の歴史や規格、耐摩耗性、製造方法について解説いたしました。


次回はvol.2では、機械的性質や物理的性質、切断や溶接をはじめとした加工ノウハウ、用途などについて解説していきます。

活用事例をブログで紹介しています。

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ハイマンガン鋼 溶接構造品の加工事例

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