高マンガン鋼(ハイマンガン鋼・NM-13MN)とは?加工硬化・非磁性・用途を解説
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高マンガン鋼(ハイマンガン鋼)NM-13MNとは何かを、加工硬化によって耐摩耗性が高まる仕組み、非磁性の理由、特徴、用途、規格上の位置づけまで鋼材専門商社がわかりやすく解説します。
目次
執筆・監修者
熊谷憧一郎(くまがい しょういちろう)
クマガイ特殊鋼株式会社 代表取締役社長。1977年生まれ、愛知県出身、成蹊大学経済学部卒業。2000年に大手総合商社へ入社し、ステンレス鋼材の販売に4年間従事。その後、現在の会社に入社し営業・加工技術の実務経験を積み、2013年より現職。特殊鋼販売技師の資格を有し、特殊鋼材の販売・加工に一貫して携わる。
高マンガン鋼(ハイマンガン鋼)は、マンガン(Mn)を多く含み、強い衝撃を受けると表面が加工硬化して耐摩耗性を発揮する鋼材です。磁石にくっつきにくい非磁性と、優れた靭性を併せ持つことも大きな特徴です。ハイマンと呼ばれることもあります。
なかでもNM-13MNは、マンガンを約13%含む高マンガン鋼として、破砕機や各種ライナー、土砂ホッパー、ショットブラスト機の内張りなど、衝撃と摩耗が同時に発生する箇所で使われています。
ただし、どのような摩耗環境でも性能を発揮するわけではありません。高マンガン鋼は、表面を十分に加工硬化させる衝撃が加わる環境に適した材料です。本記事では、NM-13MNが衝撃で硬くなる理由、非磁性の理由、規格上の位置づけ、用途と選定の考え方を解説します。
この記事でわかること
- 高マンガン鋼とNM-13MNの基本的な特徴
- 衝撃によって表面が硬くなる加工硬化の考え方
- 磁石にくっつきにくい理由と取り扱い上の注意
- 高マンガン鋼が向いている摩耗条件と主な用途
- 圧延鋼板とJIS規格の関係、水靭処理の概要
1.高マンガン鋼(ハイマンガン鋼)とは
高マンガン鋼とは、鋼にマンガンを多量に添加した鋼材です。代表的な高マンガン鋼は、炭素を約1%、マンガンを11~13%程度含みます。機械構造用合金鋼のSMn420なども名称に「マンガン鋼」を含みますが、成分や特徴、用途は異なるため混同しないよう注意が必要です。
一般的な鋼材は、高温ではオーステナイト組織ですが、冷却される過程で結晶構造が変化します。一方、高マンガン鋼はマンガンと炭素の働きによって、常温でもオーステナイト組織が安定します。この組織が、高い靭性や非磁性といった特徴に関係しています。
オーステナイト組織を持つ点は一部のステンレス鋼と共通しますが、高マンガン鋼はステンレス鋼と同じ材料ではありません。高マンガン鋼の中心的な特徴は、耐食性ではなく、加工硬化による耐衝撃摩耗性と非磁性です。
2.NM-13MNの主な特徴
| 特徴 | 概要 |
|---|---|
| 加工硬化 | 衝撃や変形を受けた表面が硬くなり、摩耗に耐える性質が高まります。 |
| 耐衝撃摩耗性 | 岩石や鋼材などが繰り返しぶつかる環境で、加工硬化を生かせます。 |
| 非磁性 | 常温でオーステナイト組織を持つため、磁石にくっつきにくい材料です。 |
| 高い靭性 | 衝撃を受けても割れにくい性質を持ち、表面が硬化した後も内部の粘りを生かせます。 |
3.なぜ衝撃を受けると硬くなるのか
NM-13MNは、変形すると加工硬化する性質を持っています。表面に物がぶつかる、押しつぶされる、曲げられるといった力が加わると、その部分に塑性変形が生じ、変形した表面が硬くなります。つまり「衝撃そのものが熱処理のように鋼全体を硬くする」のではなく、衝撃を受けて変形した部分が加工硬化するという考え方です。
使用中に表面が硬くなりやすい一方、内部は比較的高い靭性を保ちます。そのため、硬さだけを高めた材料とは異なり、強い衝撃と摩耗が繰り返される箇所で力を発揮します。切削や穴あけなどの加工中にも加工硬化が進むため、加工には材料特性を踏まえた条件設定とノウハウが必要です。加工方法については、関連記事で詳しく解説します。
4.高マンガン鋼(ハイマンガン鋼)は本当に磁石にくっつかないのか
高マンガン鋼は、常温で非磁性のオーステナイト組織を持つため、一般的な鉄鋼材料のようには磁石にくっつきません。この特性から、磁気の影響を避けたい部材にも利用されます。
ただし、非磁性には用途ごとに求められる透磁率や測定条件があります。また、材料の履歴や加工・溶接条件の影響を確認すべき用途もあります。磁気特性が性能や安全性に直結する場合は、「磁石につかない」という確認だけで判断せず、要求値と検査方法を事前に取り決めることが重要です。なお、非磁性のため、マグネットリフターによる搬送には適しません。
磁石につかない鋼材については以下↓↓↓コラムでまとめています。是非ご覧ください。

5.高マンガン鋼の歴史とNM-13MNの規格
高マンガン鋼の歴史は古く、1880年代にイギリスの冶金学者ロバート・ハッドフィールドによって開発されました。そのため、ハッドフィールド鋼と呼ばれることもあります。代表的な成分系は、炭素を約1%、マンガンを11~13%程度含むものです。
日本では高マンガン鋼鋳鋼品についてJIS G 5131が定められています。一方、圧延鋼板としての高マンガン鋼には、同様のJIS規格は設けられていません。NM-13MNは日本製鉄の高マンガン鋼板の規格名として流通している材料です。発注や材料選定の際は、鋳鋼品のJIS規格と圧延鋼板のNM-13MNを分けて確認する必要があります。
現行記事では規格名の由来にも触れていましたが、メーカーの公式資料で確認できない由来は断定せず、材質名と要求仕様を正確に伝える方が実務的です。成分値、機械的性質、磁気特性などが設計条件になる場合は、最新のメーカー資料や検査証明書で確認してください。
6.NM-13MNが得意な摩耗と苦手な摩耗
NM-13MNは、物がぶつかる衝撃によって表面が加工硬化し、摩耗が進みにくくなる鋼材です。そのため、小さな粒子が表面を擦り続ける摩耗よりも、岩石や鋼材などが強くぶつかり、えぐるように摩耗する環境に適しています。
| 区分 | 摩耗の状態 | 選定の考え方・用途例 |
|---|---|---|
| 向いている条件 | 大きな衝撃を伴う摩耗 | 破砕機、ライナー、土砂ホッパー、ショットブラスト機の内張りなど |
| 注意が必要な条件 | 衝撃が小さく、微細な粒子が表面を擦る摩耗 | 十分に加工硬化せず、期待した耐摩耗性を得にくい場合があります |
耐摩耗鋼は、初期硬さが高ければ常に長寿命になるとは限りません。衝撃の大きさ、摩耗物の粒径と硬さ、接触圧力、温度、水分、部材形状などによって結果が変わります。既存材から置き換える場合は、実際の摩耗状態を確認し、必要に応じて試験使用で効果を検証することをおすすめします。

7.NM-13MNはどのように製造されるのか
13Mn鋼は炭素量が高いため、鋳造後や圧延後の状態では炭化物が存在し、靭性を低下させる原因になります。そこで一般的には、約1050~1100℃に加熱して炭化物をオーステナイト中に固溶させた後、速やかに水冷する水靭処理を行います。
普通の炭素鋼では、高温から急冷するとマルテンサイト変態によって硬化する場合があります。しかし高マンガン鋼では、水靭処理によって常温までオーステナイト組織を保ち、炭化物の再析出を抑えながら靭性を確保します。そのため、納入時の母材が極端に硬いのではなく、使用時の衝撃や変形によって表面が加工硬化する点が特徴です。
8.NM-13MNの主な用途
NM-13MNは、衝撃と摩耗が同時に発生する次のような用途で検討されています。
- 破砕機・粉砕機のライナーや破砕部品
- 土砂ホッパーやシュートの摩耗部材
- ショットブラスト機の内張り
- スクリーンなど、繰り返し衝撃を受ける設備部品
- 非磁性が必要となる設備や構造部材
高マンガン鋼が適しているかどうかは、単に「摩耗する」という情報だけでは判断できません。衝撃がどの程度加わるか、現在の材料がどのように摩耗・破損しているか、必要な磁気特性はどの程度かまで整理すると、材料選定の精度が上がります。
9.クマガイ特殊鋼が取り扱うNM-13MN
クマガイ特殊鋼では、NM-13MNの定尺販売・切断・各種加工に対応しています。公式製品ページでは、板厚4.5~25mm、定尺寸法1524×3048mmの取り扱いを案内しています。定尺や切板に加え、穴あけ、曲げ、溶接などを含む部品加工についてもご相談いただけます。
NM-13MNは、加工硬化しやすく、非磁性のためマグネットハンドリングができないなど、普通鋼とは異なる扱いが必要です。材料選定から加工方法までまとめて検討したい場合は、使用環境、現行材、必要寸法、図面などをお知らせください。用途に応じた材料と加工方法を検討します。
10.ハイマンガン鋼(NM-13MN)よくあるご質問
高マンガン鋼とNM-13MNは同じものですか?
高マンガン鋼はマンガンを多く含む鋼材の総称です。NM-13MNは、そのうち約13%Mn系の高マンガン鋼板として流通している規格名です。
NM-13MNは衝撃を受けるほど鋼板全体が硬くなりますか?
主に衝撃や変形を受けた表面が加工硬化します。内部まで一様に硬くなるわけではないため、表面の耐摩耗性と内部の靭性を生かせます。
高マンガン鋼は磁石にくっつきますか?
常温でオーステナイト組織を持つため、一般的な鉄鋼材料のようには磁石にくっつきません。厳密な磁気特性が必要な用途では、要求透磁率や測定条件の確認が必要です。
高マンガン鋼は錆びにくい材料ですか?
非磁性という点ではオーステナイト系ステンレス鋼と共通しますが、高マンガン鋼はステンレス鋼ではありません。耐食性を主目的とする材料ではないため、使用環境に応じた防食の検討が必要です。
NM-13MNはどのような摩耗に向いていますか?
岩石などが強くぶつかる、えぐるような衝撃摩耗に向いています。細かな粒子が弱い力で擦るだけの環境では、加工硬化を十分に生かせないことがあります。
NM-13MNの切断や穴あけも依頼できますか?
クマガイ特殊鋼では定尺・切板販売に加え、切断や穴あけ、曲げ、溶接などの加工相談を受け付けています。寸法、数量、図面、使用条件をご提示ください。
11.まとめ
高マンガン鋼(ハイマンガン鋼)NM-13MNは、強い衝撃によって表面が加工硬化し、耐摩耗性を発揮する非磁性の鋼材です。高い靭性も持つため、破砕機やライナーなど、衝撃と摩耗が繰り返される箇所に向いています。
一方、衝撃の少ない摩耗環境では、十分に加工硬化せず、期待した効果を得られない場合があります。高マンガン鋼の選定では、摩耗の種類と衝撃の大きさを確認することが重要です。
クマガイ特殊鋼では、NM-13MNの定尺・切板販売から切断、穴あけ、曲げ、溶接までご相談を承っています。「現在の部品が摩耗して交換頻度が高い」「非磁性で衝撃に強い材料を探している」といった課題がありましたら、使用条件や図面とともにお問い合わせください。
【高マンガン鋼 NM-13MNの加工方法|切断・穴あけ・曲げ・溶接の注意点】はコチラから↓↓↓

【加工事例は以下リンクからどうぞ!!】
ハイマンガン鋼 NM-13MN 溶接構造品のご紹介 | ニュース・ブログ | 創業1913年 鋼板・鋼材の専門商社|クマガイ特殊鋼株式会社
ハイマンガン鋼 NM-13Mn 加工事例 | ニュース・ブログ | 創業1913年 鋼板・鋼材の専門商社|クマガイ特殊鋼株式会社
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