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高張力鋼とは? 専門商社がわかりやすく解説します。vol.1 ~高張力とは、使用のメリット~

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高張力鋼とは? 専門商社がわかりやすく解説します。vol.1 ~高張力とは、使用のメリット~

特殊鋼のスペシャリストであるクマガイ特殊鋼が、この春入社したばかりの業界ビギナーから百戦錬磨のベテラン社員さん等に向けて、特殊鋼に関する基礎知識はもちろん「なるほど!」と思っていただけるようなまめ知識など、楽しく情報収集していただけるブログを不定期で更新してまいります。

日々の活動の一助になればという思いで、“わかりやすさ” “読みやすさ”を重視してシリーズ化していく予定です。ご期待ください!

目次

  1. 高張力鋼ってなに?
  2. 高張力鋼のメリット
  3. まとめと予告

※この記事の内容は当社見解であり、すべてを保証するものではありません。製品のご購入や加工などの際は当社を含めた専門業者への確認と目的・用途に応じた検証の上、当該材料をご使用ください。

1.高張力鋼って何?

40キロ鋼を軟鋼というのに対して、50キロ鋼以上を高張力鋼と言います。文字通り、引っ張られた時に耐える強度が高いものをいいます。

高張力鋼としては、50キロ鋼・60キロ鋼・80キロ鋼・100キロ鋼などがありますが、現在の上限は120キロ鋼ぐらいでしょうか。

耐摩耗鋼と呼ばれる硬い材料では150キロもありますが、構造用鋼として強度部材に使用することは推奨していません。


ところで『50キロ鋼』などの呼び方は通称です。

もともと、引張強さが1平方ミリメートルあたり50キログラム(50kg/mm2)の強さに耐えられる鋼材として『SM50』

58キログラムに耐えられる鋼材として『SM58』などがJISに制定されました。(1950〜1960年代ごろ)

なぜ、60キログラム以上にしてSM60にしなかったのかはここでは触れませんが、鉄鋼メーカーの作りやすさが優先されたのかもしれません。


その後、1988年に国際単位系であるSI単位を採用したため、50kgf/mm2 → 490N/mm2に変更となり『SM490』となりました。

490ニュートン鋼と呼ぶのは長いし中途半端なので未だに『50キロ鋼』などのように旧略称で呼ぶ人が多いようです。

降伏強さ

引張強度には、『引張強さ』と『降伏強さ』があります。


降伏強さとは、鋼材が荷重により塑性変形を始める強さのイメージです。

鉄を曲げたとき、離すと元に戻るのが弾性域で“降伏点に到達する前”になります。

降伏点を超えると、元の形に戻らなくなります。

釘が曲がるのはこのように降伏点を超えてしまったからです。


設計上、構造物が変形してしまうのは問題なので、降伏点をベースに計算を行います。そういう意味でも、降伏強度はより重要といえるのではないでしょうか。


日本では、TSを表記したSM490等がJIS化されていますが、海外ではYSを規格名に冠した名称が多いようです。

日本製鉄の80キロ鋼は『WEL-TEN®︎780』ですが、海外ではYSの下限の○○○○690のような名称になっています。


JIS規格の中でも比較的新しい、橋梁用高降伏点鋼板(SBHS)や溶接構造用高降伏点鋼板(SHY)のように降伏点を重視した規格は、降伏点の下限が規格名に表現されています。

JISの80キロ鋼はSHY685という規格記号になります。

ボイラ・圧力容器用鋼材ではSB=TS、SPV=YSで表記するなど混乱しちゃいますよね。

(WEL-TENは日本製鉄の登録商標です。)

2.高張力鋼のメリット

話がそれましたが、高張力鋼採用のメリットって何でしょうか?

40キロ鋼と80キロ鋼では『引張強さ』は約2倍ですが、先程の『降伏強さ』でいうと3倍近くなります。

当然ながら強度が高いので、板厚を薄くすることができます。

板厚を薄くすると軽くなるもの大きなメリットです。


東京スカイツリーの最上部の電波塔には、80キロの高張力鋼が使われています。アンテナを支えるため強度が必要ですが、そのために板厚を厚くすると塔の上部が重くなってしまい、それを支える下の部分も頑丈にしなければならなくなり全体の重量が上がってしまうことを避けることができます。

クマガイ特殊鋼 高張力鋼とは
Jirapon ProhsunthornによるPixabayからの画像

その他、高いところに荷物を積み上げるクレーン車では『ブーム』と呼ばれる筒を伸ばしていくのですが、先端に行くほど板厚は薄くなります。

強度的には高張力鋼が使われます。せっかく重いものを吊り上げるのに自重が重くなってはもったいないですからね。

クマガイ特殊鋼 高張力鋼とは
クレーン ブームの先端

溶接時のメリット

板厚が薄くなると、軽量化以外にも溶接でつなぐ際に、溶接量が減らせるメリットがあります。

100㎜の板どうしを溶接するのと、50㎜どうしを溶接でつなぐのでは手間を約半分にすることができます。

溶接って結構大変ですよね。

クマガイ特殊鋼_高張力鋼の溶接メリット
溶接量軽減のイメージ

まとめ

今回は、高張力鋼の基本的な解説とメリットを中心にご紹介しました。

次回以降のブログでは、高張力鋼の製造方法や試験方法、規格体系についてご紹介する予定です。

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