高張力鋼板(ハイテン)とは?特徴・用途・SS400との違いをプロが解説【在庫・加工対応】
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高張力鋼板(ハイテン)の基礎知識を専門商社が解説。SS400との強度・重量比較から、WEL-TENやJFE-HITENなどの主要ブランドの引張強さ(590〜980N/mm²級)まで網羅。軽量化を実現するメリットや具体的な用途、在庫・加工についてもご紹介します。
目次
執筆・監修者
熊谷憧一郎(くまがい しょういちろう)
クマガイ特殊鋼株式会社 代表取締役社長。1977年生まれ、愛知県出身、成蹊大学経済学部卒業。2000年に大手総合商社へ入社し、特殊鋼材の販売に4年間従事。その後、現在の会社に入社し営業・加工技術の実務経験を積み、2013年より現職。
「製品を軽量化したいが、強度は落としたくない」「SS400よりも強い鋼材を探している」といった設計・調達の課題を解決するのが高張力鋼板(ハイテン)です。
本記事では、特殊鋼の専門商社であるクマガイ特殊鋼が、ハイテンの基礎からSS400との違い、主要メーカーブランドの性能比較までをプロの視点でわかりやすく解説します。
当社では、JIS規格や主要ブランドWEL-TEN®シリーズを豊富に在庫し、1枚からの切り板加工も承っております。 規格選定や納期でお急ぎの方は、お気軽にご相談ください。
1.高張力鋼板(ハイテン)の定義
40キロ鋼を軟鋼というのに対して、50キロ鋼以上を高張力鋼と言います。文字通り、引っ張られた時に耐える強度が高いものをいいます。
高張力鋼としては、50キロ鋼・60キロ鋼・80キロ鋼・100キロ鋼などがありますが、現在の上限は120キロ鋼ぐらいでしょうか。
耐摩耗鋼と呼ばれる硬い材料では150キロもありますが、構造用鋼として強度部材に使用することは推奨していません。
ところで『50キロ鋼』などの呼び方は通称です。
もともと、引張強さが1平方ミリメートルあたり50キログラム(50kg/mm2)の強さに耐えられる鋼材として『SM50』
58キログラムに耐えられる鋼材として『SM58』などがJISに制定されました。(1950〜1960年代ごろ)
なぜ、60キログラム以上にしてSM60にしなかったのかはここでは触れませんが、鉄鋼メーカーの作りやすさが優先されたのかもしれません。
その後、1988年に国際単位系であるSI単位を採用したため、50kgf/mm2 → 490N/mm2に変更となり『SM490』となりました。
490ニュートン鋼と呼ぶのは長いし中途半端なので未だに『50キロ鋼』などのように旧略称で呼ぶ人が多いようです。
1-1.降伏強さ
引張強度には、『引張強さ』と『降伏強さ』があります。
降伏強さとは、鋼材が荷重により塑性変形を始める強さのイメージです。
鉄を曲げたとき、離すと元に戻るのが弾性域で“降伏点に到達する前”になります。
降伏点を超えると、元の形に戻らなくなります。
釘が曲がるのはこのように降伏点を超えてしまったからです。
設計上、構造物が変形してしまうのは問題なので、降伏点をベースに計算を行います。そういう意味でも、降伏強度はより重要といえるのではないでしょうか。
日本では、TSを表記したSM490等がJIS化されていますが、海外ではYSを規格名に冠した名称が多いようです。
日本製鉄の80キロ鋼は『WEL-TEN®︎780』ですが、海外ではYSの下限の○○○○690のような名称になっています。
JIS規格の中でも比較的新しい、橋梁用高降伏点鋼板(SBHS)や溶接構造用高降伏点鋼板(SHY)のように降伏点を重視した規格は、降伏点の下限が規格名に表現されています。
JISの80キロ鋼はSHY685という規格記号になります。
ボイラ・圧力容器用鋼材ではSB=TS、SPV=YSで表記するなど混乱しちゃいますよね。
(WEL-TENは日本製鉄の登録商標です。)
1-2.【一覧】主要規格・ブランドの引張強さ比較
| 強度クラス | 中厚板における 代表的な規格・ブランド | 引張強さの範囲 (N/mm2) | 特徴、主な用途 |
| 400N級 | SS400 (JIS規格一般構造用鋼) | 400~510 | 比較の基準。加工性は良いが、強度確保には板厚などで対応が必要。 一般的に溶接性に問題はないが、担保している訳ではない。 |
| 570N級 | SM570 WEL-TEN 590 JFE-HITEN 590 K-TEN 590 | 590 〜 710 | 【人気NO.1】 橋梁、建機、産業機械。強度と加工性のバランスが良い。 |
| 780N級 | WEL-TEN 780 JFE-HITEN 780 K-TEN 780 | 780 〜 930 | 建機、産業機械、大型車両、クレーンブーム。570N級よりも強度の欲しい場合。大幅な軽量化が可能。 |
| 980N級 | WEL-TEN 950 JFE-HITEN 980 | 980 〜 1130 | 超高張力鋼。かなりの強度が求められる特殊部材に。加工には経験・ノウハウがあった方が良い。 |
2.高張力鋼を使用するメリット
高張力鋼採用のメリットって何でしょうか?
2-1.軽量化(板厚減)のメリット
40キロ鋼と80キロ鋼では『引張強さ』は約2倍ですが、先程の『降伏強さ』でいうと3倍近くなります。
当然ながら強度が高いので、板厚を薄くすることができます。
板厚を薄くすると軽くなるもの大きなメリットです。
2-2.溶接時のメリット
板厚が薄くなると、軽量化以外にも溶接でつなぐ際に、溶接量が減らせるメリットがあります。
100㎜の板どうしを溶接するのと、50㎜どうしを溶接でつなぐのでは手間を約半分にすることができます。
溶接って結構大変ですよね。

3.ハイテンの使用用途
東京スカイツリーの最上部の電波塔には、80キロの高張力鋼が使われています。アンテナを支えるため強度が必要ですが、そのために板厚を厚くすると塔の上部が重くなってしまい、それを支える下の部分も頑丈にしなければならなくなり全体の重量が上がってしまうことを避けることができます。

その他、高いところに荷物を積み上げるクレーン車では『ブーム』と呼ばれる筒を伸ばしていくのですが、先端に行くほど板厚は薄くなります。
強度的には高張力鋼が使われます。せっかく重いものを吊り上げるのに自重が重くなってはもったいないですからね。

4.高張力鋼(ハイテン)選定時の注意点(SS400との違い)
ハイテンは非常に優秀な材料ですが、SS400と同じ感覚で扱うとトラブルの原因になることがあります。
- 【加工難易度の変化】 強度が高いため、曲げ加工時の「スプリングバック(跳ね返り)」が大きくなります。
- 【溶接割れのリスク】 強度が高い材料ほど、溶接時の「冷熱割れ」への注意が必要です。
- 【剛性(たわみ)の検討】 板厚を薄くできる反面、部材全体の「たわみ」が大きくなるため、設計上の配慮が求められます。
※加工の注意点や、溶接性を高める「TMCP鋼」の仕組みについては、以下の記事で詳しく解説しています。
5.高張力鋼板に関するよくあるご質問(FAQ)
| 質問(Q) | 回答(A) |
| Q:高張力鋼(ハイテン)とSS400の最大の違いは何ですか? | A:最大の違いは「強度」です。ハイテンはSS400より引張強さが強いため、部材を薄く・軽くしても同じ強度を保つことができます。これにより、製品の軽量化や材料コストの削減が可能になります。 |
| Q:ハイテンを使うと、どのくらい軽量化できますか? | A: 設計によりますが、SS400から570N/mm²級(SM570等)へ切り替えることで、部材重量を20〜30%程度削減できるケースが多くあります。さらに強度の高い780N/mm²級などを使えば、それ以上の軽量化も可能です。 |
| Q:一般の販売店では高張力鋼(ハイテン)の在庫が少ないと聞きましたが、クマガイ特殊鋼ではどうですか? | A: 当社は特殊鋼の専門商社として、主要ブランドWEL-TEN®など高張力鋼板の中厚板を常時豊富に在庫しております。一般的には手に入りにくい厚板や特殊な規格も、1枚から切り板加工して最短納期でお届けします。 |
| Q:ハイテンを初めて使うのですが、溶接や曲げ加工で注意点はありますか? | A: 強度が高い分、SS400に比べて「スプリングバック(跳ね返り)」が大きかったり、溶接時に「割れ」が生じやすかったりする特性があります。当社では加工のノウハウも豊富ですので、ご不安な場合は最適な加工条件をご提案いたします。 |
他にも「よくあるご質問(FAQ)」を以下にまとめてあります。参考にしてください。
次は自分に合った「高張力鋼板(ハイテン)の種類・規格一覧|ブランド別の違いと選定のポイント」を選ぼう
5.特殊鋼の在庫・切り板加工ならクマガイ特殊鋼へ
「ハイテンの在庫がある店が見つからない」「1枚だけ、このサイズに切ってほしい」といったご要望は、創業100年を超える弊社にお任せください。
- 主要ブランドを幅広く在庫: JIS規格SM570、WEL-TEN540、WEL-TEN590、WEL-TEN780の主要サイズを常時ストック。
- 高度な切り板加工: 自社工場のレーザー・プラズマ切断機により、高品質・高精度な加工を実現。
- 二次加工以降にも対応:切断から曲げ加工・機械加工・表面処理など追加工にも対応します。
- 即日回答・短納期: お見積り依頼には最短即日で回答いたします。
「SS400からハイテンに切り替えたいが、どの規格が良いか?」といったご相談も大歓迎です。まずはお気軽にお見積り・お問い合わせください。
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