新規導入『水素ガス切断』について しくみやメリットについてご紹介します
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今回は当社が新しく導入した『水素ガス切断』について紹介します。
熱切断について
水素ガス切断の紹介に入る前に、熱切断について簡単に紹介します。鋼材を熱で切断する方法として、ガス切断、レーザ切断、プラズマ切断の3つが主なものです。
この中で、最も古くから活用されてきたのが『ガス切断』です。
ガス切断
ガス切断は鉄と酸素の酸化反応を利用しているもので、ノズル(火口)の先端で発生させた火炎を使い、鉄を溶融させるとともに、できた溶融物(溶けた酸化鉄)をガスで吹き飛ばしています。
鉄は鉄鉱石である鉄の酸化物を還元して作っているのですが、切断部だけそれをまた酸素で燃やすことで酸化させて、酸化物に戻しているのです。
この際、燃やすことで熱が発生するので、この酸化熱も利用して連続で切断を行っています。
ガス切断のノズル先端の外周は、プロパンなどのガスが燃えているのですが、中央部には酸素を大量に噴き出しているので酸素ガスのまま奥まで入り込んでいきます。
理科の実験で習ったガスバーナーは燃焼ガスが中央で、回りに空気を供給して燃焼させていたのですが、ガス溶断では逆に周囲が燃焼ガス、中心が酸素になります。
プラズマ切断
一方、プラズマ切断ではアーク放電で発生させた電気エネルギーを熱源として利用しています。
プラズマ化した高温の気体で鉄を溶融し排出しているのです。鉄の融点(1500℃程度)よりもはるかに高い10000℃以上の温度のため容易に溶かすことができるのです。
ただし、プラズマアークが届く範囲が限られるので、切断できる板厚もせいぜい50㎜までに限られます。
酸化発熱は必ずしも必要ではないので酸素は必須ではないのですが、作動ガスに酸素を使う酸素プラズマと呼ばれる切断機があります。
作動ガスの目的はあくまでもプラズマアークの安定と溶融物の除去、ノズルの保護になります。
レーザ切断
また、レーザ切断についても簡単に触れておきます。レーザ切断はレーザ光をレンズで集光し、その光による熱エネルギーで鉄を溶融しています。
その際、溶けた鉄を吹き飛ばすことが必要で、そのためのガスをアシストガスと言います。
このアシストガスに酸素を用いると、ガス切断と同じように酸化反応での熱も利用できるので切断板厚の拡大ができます。
切断板厚の拡大は出力の拡大と連動しますが、アシストガスも重要です。現状では最大30㎜程度でしょうか。
なお、CO2レーザ切断機の「CO2」はレーザ発信機の媒質のことを言っているのであって、溶断の排ガスとは関係ありませんので、念のため。
クマガイ特殊鋼が導入した水素ガス切断機のご紹介
前置きが長くなりましたが、改めてクマガイ特殊鋼が新しく導入した水素ガス切断機についてご紹介します。
水素ガス切断とは、ガス切断機の燃焼ガスに水素をメインに使用しているものです。水素の燃焼のためだけではなく、鉄の酸化のための酸素は従来どおり必須です。
これまでの切断機の燃焼ガスは、プロパン(C3H8)やアセチレン(C2H2)などの炭化水素系のガスです。これらが燃焼するとCO2とH2Oが発生するのに対して、水素だとH2Oしか発生せずCO2の排出量はほぼゼロになります。
ただし、水素を燃焼させた場合は輝度が低く炎が見えにくいので、水素にわずかにプロパンなどを混ぜて見やすくしています。
クマガイ特殊鋼ではプロピレン(C3H6)を使っています。それでも、CO2の排出量は一般的なプロパンを燃焼ガスに使った場合より大幅削減になります。
水素ガス切断機のメリット
水素ガス切断機のメリットについて、CO2の排出量低減以外の観点で記載します。
水素の燃焼ではプロパンに比較し燃焼速度が速いため、短時間で集中的に温度が上昇します。
このため局所加熱が可能で、切断速度が2~3割速くなり生産性が上がります。また熱影響部も小さくなることから熱歪による変形が小さくなります。
鋼材の温度上昇が抑制されるため、輻射熱による作業環境も改善されます。
さらに燃焼ガスに必要な酸素消費量は水素の半分で済みますので、5倍必要なプロパンに比較し酸素の消費量が低減できます。
ピアッシング時間もプロパンより短縮できますが、クマガイ特殊鋼では夜間稼働できるドリルによる穴あけを採用しさらに効率的に運用しています。
水素ガス使用時の注意点
水素は空気の1/14程度の比重しかないので、漏れても拡散が容易です。
またアセチレンと並んで爆発範囲(燃焼限界)は広いのですが、爆発下限界濃度が高いので比較的爆発の危険は少ないと言えます。ただ、集積したままの状態にならないよう十分注意は必要です。
水素の価格は今後安くなっていくことは考えられますが、現在ではまだ高めです。ある程度、他のメリットで相殺される必要があります。
クマガイ特殊鋼の水素ガス溶断機について
メーカー | 日酸TANAKA株式会社 |
機種 | KT-650(他のガス溶断機と共通、配管・火口等は水素専用) |
ベッドサイズ | 3,300×24,000 |
吹管本数 | 8本 |
自動化装置 | 厚板ピアシング用ドリル装置付き |
切断可能厚 | 実績最大100mm、公称最大厚200mm |
以上、クマガイ特殊鋼が導入した水素ガス切断機について、簡単に紹介してきました。水素ガス切断機は、地球にやさしい切断機として、今後も増えていくものと考えられます。
水素ガス切断機の利用による、CO2排出量の削減や生産性向上に関してご興味がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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