耐候性鋼板 COR-TEN®︎の使い方・規格・溶接・施工上の注意点|実務ガイド
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目次
このページでは、耐候性鋼板(COR-TEN®)の使い方・規格・施工対応・注意点を、設計者・施工者・調達者の視点で整理します。耐候性鋼の本質は「さびを使って腐食を抑える」という特徴にありますが、実際の業務で活かすにはどのような点に配慮すべきかが最も重要です。
※この記事の内容は当社見解でありすべてを保証するものではありません。製品のご購入や加工などの際は当社を含めた専門業者への確認と目的・用途に応じた検証の上、当該材料をご使用ください。
執筆・監修者
熊谷憧一郎(くまがい しょういちろう)
クマガイ特殊鋼株式会社 代表取締役社長。1977年生まれ、愛知県出身、成蹊大学経済学部卒業。2000年に大手総合商社へ入社し、特殊鋼材の販売に4年間従事。その後、現在の会社に入社し営業・加工技術の実務経験を積み、2013年より現職。特殊鋼販売技師の資格を有し、特殊鋼材の販売・加工に一貫して携わるプロフェッショナル。また会社代表として特殊鋼販売技師や加工技師などのプロ社員集団を束ねる。
1.はじめに
候性鋼板 COR-TEN®について、これまでの基礎的な仕組みや特徴をご紹介してきました(vol.1 / 4727)。
耐候性鋼板 COR-TEN®︎とは?特徴・仕組み・設計時の注意点を解説 | ニュース・ブログ | 創業1913年 鋼板・鋼材の専門商社|クマガイ特殊鋼株式会社
本ページ(vol.2)は、それらの基礎理解を前提に、耐候性鋼板の具体的な使い方・規格・施工・加工時の注意点など、現場の実務者や設計・調達担当者の方々がそのまま実務に活かせる内容を中心にまとめたものです。
耐候性鋼板(COR-TEN®)は、さびの進行を抑えるという特性から、外装・構造物・意匠用途など幅広く活用されています。無塗装での使用が可能というメリットだけでなく、施工や溶接、納まりといった具体的な使い方に応じた設計・施工上の配慮が成果を左右する鋼材でもあります。
このページでは、以下のような実務的な疑問・検討項目について順に解説します:
- COR-TEN鋼をどのように使うべきか(無塗装・表面処理・塗装仕様)
- 規格と材料特性の違い(種類・用途別の選び方)
- 溶接・接合における注意点
- 飛来塩分や環境条件との関係
- 実務者が抑えておくべき設計・納まりのポイント
耐候性鋼板を適切に選定し、長期的な性能を発揮させるためには、材料性能だけでなく使用環境や施工条件、設計上の配慮をしっかり押さえることが重要です。この点について、図面検討や仕様検討の段階からでもご活用いただけるよう解説していきます。
なお、耐候性鋼板の基礎知識や特性については、先の「耐候性鋼板 COR-TEN®とは?特徴・仕組み・設計時の注意点を解説(vol.1)」をご参照ください。
さびで錆を防ぐ? 耐候性鋼板 COR-TEN®︎とは vol.1
2.COR-TEN鋼の使い方(3つの基本)
前回、COR-TEN鋼とはどういうものか、どうやって使うのかについて書いてきました。
COR-TENの基本的な使用方法は、大きく分けて
- 無塗装
- さび安定化補助処理(これも塗装ではないため無塗装の一種)
- 塗装
の3種類があります。
塗装にしろ、無塗装にしろ、耐候性鋼採用のメリットを考えるときに重要になるのは「景観」と「ライフサイクルコスト(LCC)」という考え方です。初期施工費用は、一般鋼に塗装するよりも若干高くなることがあっても、何回も塗り替えをしなくて済むため、その費用が削減でき、構造物の寿命までにかかる費用をトータルすると安く済む、という考え方です。
初期に安いものを買っても修理を繰り返しているうちにかえって高くつくことがあります。購入時に少々高くても、メンテナンス費用のかからない方を選択するというイメージに近いかもしれません。
以下それぞれ整理していきます。
2-1.無塗装仕様
COR-TEN鋼の最も基本的な使用方法は「無塗装仕様」です。
耐候性鋼は、大気中で乾燥と湿潤を繰り返すことで表面に緻密な保護性さびを形成し、内部腐食の進行を抑制します。この保護さびが塗膜の役割を果たすため、原則として塗装を必要としません。
無塗装仕様は、
- 再塗装を避けたい構造物
- 長期的な維持管理コストを抑えたい用途
- 経年変化を意匠として活かしたい建築物
などで多く採用されています。特に橋梁や外装材、モニュメントなどでは、時間の経過とともに落ち着いた濃茶色へと変化する外観が評価されています。
2-2.さび安定化補助処理(無塗装の一種)
さび安定化補助処理は、塗装とは異なり、あくまで保護性さびの形成を助けるための処理です。
無塗装仕様の一種であり、初期の流れさびや外観のまだらを抑える目的で用いられることがあります。
景観を重視する建築用途などでは、初期段階での外観安定化を目的として選択される場合があります。
基本的な耐候性の考え方は無塗装仕様と同じであり、乾湿繰り返しによって保護さびを形成することが前提です。
2-3.塗装仕様
COR-TEN鋼は無塗装が基本ですが、あえて塗装して使用する場合もあります。
塗装を施した場合でも、下地が耐候性鋼であることで、塗膜が傷ついた部分から腐食が進行しにくく、塗膜の剥離拡大を抑えられるメリットがあります。このため、再塗装周期が長くなる可能性があり、結果としてライフサイクルコストの低減につながる場合があります。
ただし、飛来塩分の高い環境などでは、無塗装ではなく塗装仕様を前提とする判断が必要になることがあります。(※飛来塩分の高い環境下については後に詳しく解説します)
また、近年では飛来塩分の高めの環境に対応するニッケル系高耐候性鋼なども開発されています(商品名はCOR-TENではありません)。使用環境に応じた鋼材選定と仕様検討が重要です。
2-4.COR-TEN 使い方のまとめ表
使い方について簡単にまとめますと表1のようになります。
2)紀平寛ら:耐候性鋼の腐食減耗予測モデルに関する研究.土木学会論文集(2005).780号,p.71-86
| 使用法 | メリット | デメリット | LCC |
|---|---|---|---|
| 無塗装 | 通常追加のメンテナンスを必要としない(さびの状況確認は必要) | 初期錆(黄さび、流れさび)発生、 飛来塩分が多いと保護性さびができない | ★★★ |
| さび安定化 補助処理 | 初期錆の問題なし。 長期で保護性さびに移行 | 被膜が保護性さびに置き換わる際に不均一性が生じる | ★★ |
| 塗装 | 塗装塗り替え周期が長くなる | 初期費用が高くなる | ★ |
3.COR-TEN鋼の規格と材料特性
COR-TENの規格は、USSが制定しております。
3-1.国内・国際規格の違い(日本製鉄・USS)
COR-TENを名乗る以上、国際的にはこの規格を守るべきと思いますが、日本製鉄は表1に示すように国内向けに若干修正した規格を制定しております。耐候性能を決定する成分については遵守していますが、機械的性質については、国内向けにマイナーチェンジしているのです。
| 含P耐候性鋼 | 一般耐候性鋼(50キロ) | 一般耐候性鋼(60キロ) | |
|---|---|---|---|
| USS規格 | COR-TEN A | COR-TEN B | COR-TEN B-QT |
| 日本製鉄 相当規格 | COR-TEN O | COR-TEN 490@ | COR-TEN 570 |
これまでに国内で最も販売されているCOR-TENはリン(P)を大量に含む、耐候性を重視したCOR-TEN O (コルテン オー)と呼ばれるものだと思います。USS規格のCOR-TEN Aに相当します。
COR-TEN Aは上限板厚1/2inch(12.7㎜)ですが、COR-TEN Oは上限76㎜までカタログに記載されています。しかしながら通常使われるのは12㎜以下か、せいぜい25㎜までです。COR-TEN Oは溶接部の特性を劣化させるPの含有量が高いため溶接については注意が必要です。耐候性鋼の溶接については改めて書きます。
COR-TEN Oには、厚板を含む熱延鋼板以外に、冷延鋼板、形鋼、棒鋼などがありますが耐候性成分は共通のため同様の耐候性能を持っています。
COR-TEN O以外に一般的な耐候性能を持つCOR-TEN 490とCOR-TEN 570があります。厚板を中心とした熱間圧延鋼板が中心です。COR-TEN 490とCOR-TEN 570は強度、靭性レベルの違いだけで、耐候性能は変わりありません。
表2にそれぞれの鋼種の化学成分を、表3に機械的性質を示します。
COR-TEN OはPが0.1%程度添加されています。一般鋼より1オーダー(1桁)多い感じです。最近の製鋼技術ではPは非常に低くなっていますので、添加しないといけないレベルです。インドの鉄塔が1500年以上朽ちずに持っており、これはインドの気候と当時の鉄がPが高かったためという話を聞いたことがありますが、本当なら面白いですね。
機械的性質に関しては、COR-TEN OとCOR-TEN 490は50キロクラス、COR-TEN 570は60キロクラスになります。COR-TEN OとCOR-TEN490Aは、靭性保証はされていませんが、それなりの靭性はありますので、薄手材では母材靭性が問題になることはあまりないのではないでしょうか。


4.COR-TEN鋼 溶接・接合上のポイント
COR-TEN鋼には専用の溶接材料が必要です。溶接部も母材と同じように耐候性がないと溶接部だけ保護性さびが形成されず腐食が進んでしまいますので、耐候性のある溶接材料をお使いください
4-1.COR-TEN鋼の溶接に必要な考え方
溶接の際に予熱が必要かどうかは、微妙なところであり、溶材メーカーは板厚25㎜を超えると若干の予熱を推奨しています。
COR-TEN Oについては母材のPが高く、それに溶材も合わせようとすると溶接部の高温割れが起こるとともに、靭性も低下するので溶接には不向きです。
溶接して使うのは板厚13㎜未満とし、溶接は低電流、低入熱として母材の溶け込みをなるべく小さくすることが必要です。溶材はCOR-TEN 490用を流用することになります。
そういう意味では溶接部の耐候性は母材より若干落ちることになりますが、これまで問題になったことは無いと思います。
板厚13㎜以上の溶接については、メーカーは許容していませんが、実際に溶接されて使用された例はあります。強度部材として使用せず、溶接部の欠陥を検査すれば問題ないのではと思いますが、COR-TEN490を使用した方が無難かもしれません。
表4に溶接材料の一覧を示します。日鉄溶接工業(株)より販売されています。必要であれば弊社でも承ります。

5.COR-TEN鋼の耐候性鋼として以外の使い方
COR-TENは耐候性鋼としての使われ方が中心ですが、特にCOR-TEN Oはそれ以外の使われ方もあります。
例えばコンクリートミキサーでは、耐食性以外に耐摩耗性がいいということで使われています。強度が50キロレベルであることも影響しているかもしれません。石炭の貨車などに使われることもあります。塵芥車などでは汚水による腐食に対して効果がある場合が認められるようです。
6.飛来塩分と適用上のガイドライン
耐候性鋼で注意しないといけないのは、使用環境を間違えると保護性のさびが形成されず、結局塗装しないといけなくなるようなこともあることです。
特に検討すべき使用環境は「飛来塩分」です。海岸線に近い地域は、適用前に検討することが必要です。
6-1.適用の目安
適用の一応の目安として、土木研究所・鋼材倶楽部などが出した太平洋側は海岸線から2km超離れた地域、北陸・東北の日本海側は20km超離れた地域等の指針がありますが、飛来塩分が少なければこれら適用外の地域でも適用できます。
6-2.飛来塩分は距離だけではきまらない
飛来塩分は単純な海岸線からの距離だけで決まるものではありません。以下の要因によっても変動します。
- 風向き、季節風の影響
- 地形(谷地形、開けた平地など)
- 海抜
- 建築物の高さ
- 周辺の構造物の配置
同じ距離条件でも、環境条件によって実際の腐食環境は異なると思われます。
そのため、距離基準は参考値として捉えていただき、可能であれば飛来塩分量や過去の腐食実績などを踏まえて総合的に判断することが望まれます。
6-3.高塩分環境への対応
飛来塩分の影響が想定される環境では以下の対応の選択肢があります。
- 塗装仕様への変更
- ニッケル系高耐候性鋼の採用(COR-TENという商品名ではありません)
日本製鉄では、100年後の腐食量を推定する技術も開発されています。環境条件を正しく評価した上での採用が重要です。
7.実務者が知っておきたい注意点リスト
今までの内容を踏まえて、耐候性鋼板(COR-TEN®)は適切に使用すれば長期耐久性を発揮する鋼材ですが、実務上いくつか押さえておきたい主なポイントを整理します。
| 項目 | 起こり得る現象 | 主な原因 | 対策・検討事項 |
| 初期さび・流れさび | 周辺へのさび汁の付着 | 安定さび形成前の現象 | 養生の計画など |
| 表面のまだら | さびの色むら・濃淡差 | 乾燥湿潤条件の不均一 | 黒皮除去・初期外観の考慮 |
| 接合部の腐食 | 溶接部分からの腐食 | 水の滞留・溶接材料の選択誤り | 排水確保・適切な溶接材料の選定 |
| 水溜まりの腐食 | 局所の腐食進行 | 常時、湿潤状態 | 勾配・水抜き設計の採用 |
7-1.初期さび・流れさびの対策
耐候性鋼は、安定した保護さびが形成されるまでの間、さび成分が雨水とともに流れ出すことがあります(いわゆる「流れさび」)。この現象は材料不良ではなく、保護さび形成過程における自然な反応です。
ただし、コンクリート外壁、石材、タイル、外構床などにさび色が付着する可能性がありまう。設計段階で以下を検討することが望まれます。
- 初期期間の養生計画
- 意匠上許容できる範囲の確認
特に建築用途では、初期の保護さびが形成される前の外観についての理解を施主と共有することが重要です。
7-2.表面処理と経年外観の関係
さび安定化補助処理を施した場合、初期外観の安定は図れますが、被膜と生成さびが混在する期間があり、外観が均一でない状態が続くことがあります。被膜は時間の経過とともに徐々に消失し、最終的には自然な耐候性鋼の外観へ移行します。そのため、
- 完全に均一な色調を求める用途
- 早期に濃茶色外観を期待する用途
では、外観の経年変化をあらかじめ理解しておくことが重要です。
※)あらかじめ「さび色の風合い」を指定した素材の提供もございます。ご希望でしたら、お気軽にご相談ください!
8.実使用例と詳細事例紹介
8-1.飯山市文化交流館(なちゅら)の外装材と看板
長野県飯山市飯山1370-1

8-2.岡山県立大学同窓会館
岡山県総社市窪木111

8-3.店舗「きんのじ」
愛知県名古屋市中区東桜2-19-131F

9.設計・施工者向けFAQ
Q: COR-TEN鋼の溶接についてワイヤーは何を使えばよいですか?
A.耐候性の機能のある溶接材料の使用を推奨します。以下表をご参照ください。

Q: 初期さび(流れさび)を抑えるにはどうすればよいですか?
A.初期さびそのものを抑えることはできません。設計・施工上の配慮によって影響を抑えることは可能です。雨だれ経路のコントロールや周囲仕上げ材の取り合い設計、初期の養生などの対策が考えられます。
また、建築用途では、施主・設計者間で「初期外観は変化する」ことを事前に共有しておくことが重要です。
Q: 飛来塩分が高い場合、どのように仕様変更するべきですか?
A.無塗装を前提とせず、環境条件に応じた仕様選定を行うことが重要です。飛来塩分が高い環境では、保護性さびが安定形成されにくい可能性があります。その場合、以下の選択肢が考えられます。
- 無塗装仕様から塗装仕様へ変更
- ニッケル系高耐候性鋼の検討
- 定期点検計画を前提とした採用
必要に応じて、腐食予測データや過去事例を参考にしながら判断することが望まれます。
Q:無塗装と塗装では最終的にどちらが合理的ですか?
A.環境条件とライフサイクルコストで判断するのが基本です。無塗装は再塗装を避けられるメリットがありますが、環境によっては塗装仕様の方が合理的な場合もあります。
10.まとめ|COR-TEN鋼を適切に使うために
以上、COR-TENについて解説いたしました。よくCOR-TEN鋼のサンプルが欲しいと言われることがありますが、さびる前の状態は普通の鋼材と何ら変わりませんし、初期のさびも違いを見つけることは難しいです。
ウィスキーじゃありませんが、何年も熟成させて初めて風合いのあるさびが生成するのです。現物を見ないとさびのイメージがわかないかもしれませんが、日本製鉄のカタログ1)をご覧になって、COR-TENのファンが一人でも増えることを願っております。
耐候性鋼板の基礎的な仕組みや特性、設計時の考え方については、
「耐候性鋼板 COR-TEN®とは?特徴・仕組み・設計時の注意点を解説(vol.1)」もあわせてご参照ください。
耐候性鋼板 COR-TEN®︎とは?特徴・仕組み・設計時の注意点を解説 | ニュース・ブログ | 創業1913年 鋼板・鋼材の専門商社|クマガイ特殊鋼株式会社
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