SUS304とは?特性・用途・規格・加工性・他鋼種との違いまで完全解説
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― 特殊鋼のプロが語るステンレス鋼材のスタンダード ―
SUS304とは?ステンレス鋼材のスタンダードを専門家が徹底解説
SUS304は、数あるステンレス鋼の中でも最も汎用的かつ信頼性の高い鋼材として、設計・製造・建築・設備分野で広く使用されています。本記事では、SUS304の基礎知識から、化学成分、機械的性質、加工性、用途、他鋼種との違い、選定時の注意点までを実務経験に基づき体系的に解説します。
<執筆・監修者>
熊谷憧一郎(くまがい しょういちろう)
クマガイ特殊鋼株式会社 代表取締役社長。1977年生まれ、愛知県出身、成蹊大学卒業。
2000年に大手総合商社入社後、ステンレス鋼材販売に従事。2013年より現職。特殊鋼販売技師資格を有し、25年以上にわたり一貫して特殊鋼の販売・加工に携わり、会社の代表としても特殊鋼のプロフェッショナル社員集団を牽引する。
目次
1.SUS304の基本概要
1-1.SUS304とはどんなステンレス鋼か
SUS304は、JIS G4304に規定されるオーステナイト系ステンレス鋼です。
クロム(Cr)18%とニッケル(Ni)8%を含有し、「18-8ステンレス」とも呼ばれ、高い耐食性と優れた加工性を両立しています。
1-2.オーステナイト系ステンレスの特徴
オーステナイト系は以下の特性を持ちます。
- 非磁性(焼鈍状態)
- 靭性が高く低温環境にも強い
- 溶接性・成形性に優れる
SUS304はその代表格です。
2.SUS304の化学成分
2-1.JIS規格に基づく化学成分
| 元素 | 含有量(%) |
| C | 0.08以下 |
| Si | 1.00以下 |
| Mn | 2.00以下 |
| P | 0.045以下 |
| S | 0.030以下 |
| Cr | 18.00〜20.00 |
| Ni | 8.00〜10.50 |
クロムによる不動態皮膜と、ニッケルによる組織安定化が耐食性の源です。
3.SUS304の機械的性質
3-1.代表的な機械特性(参考値)
| 項目 | 値 |
| 引張強さ | 520MPa以上 |
| 耐力(0.2%) | 205MPa以上 |
| 伸び | 40%以上 |
| 硬さ | 187HBW以下 |
| 比重 | 約7.93 |
3-2.設計時に意識すべきポイント
炭素鋼と比較するとやや弾性が低く、たわみやすいため、剛性設計には注意が必要です。ヤング率は炭素鋼の205GPaに対し、SUS304は193GPa程度です。
4.SUS304の物理的・熱的性質
4-1.熱膨張と熱伝導率
- 線膨張係数:約17×10⁻⁶/K
- 熱伝導率:約16W/m・K
高温環境では寸法変化への配慮が不可欠です。線膨張係数が炭素鋼の1.5倍くらいあるため、1.5倍伸びやすくなります。熱伝導率は炭素鋼の半分より低く、熱を伝えにくい性質があります。このため、保温材料などにも使われます。
5.SUS304の耐食性
5-1.大気・水環境での耐食性
一般的な屋内外環境、水回りでは非常に優れた耐食性を発揮します。
5-2.注意すべき腐食環境
- 塩化物イオン(沿岸部、塩素系洗剤):不動態被膜を破壊してしまうため
- 高温多湿環境:これらでは孔食・すきま腐食が発生する可能性があります。
- すきま腐食:狭い隙間で塩化物イオンなどを含む液が滞留する場合に発生。
- 応力腐食割れ:塩化物イオン存在下で、応力がかかった状態だと表面から割れが進展。
- 異種金属接触腐食:溶液中でステンレスよりも卑な金属(炭素鋼など)が接触した状態だと、卑な金属の腐食が促進されます。
- もらい錆び:ステンレス表面に付着した鉄粉などが錆びて茶色に変色し、やがてステンレスも腐食します。
6.SUS304の耐熱性と耐低温性
6‐1.高温環境での使用
オーステナイト系は低温脆性が起こりにくく、低温設備にも適しています。
7.SUS304の主な用途
7‐1.産業用途
- 食品加工機械
- 化学装置・タンク
- 医療機器
7‐2.建築・設備用途
- 手すり・外装部材
- 給排水設備
- 厨房機器
7-3.身近な製品
- シンク
- 調理器具
- 家電部品
8.SUS304の加工性
8-1.切削加工
熱伝導率が低く加工熱が逃げにくいことや加工硬化しやすいことなどにより加工はしづらく、工具選定と切削条件の最適化が重要です。切削加工性を優先するならSUS303というものもあります。
8-2.曲げ・プレス加工
延性が高く、深絞りにも対応可能です。加工硬化はしやすいのでスプリングバックなども含め、配慮は必要です。
8-3.溶接性
TIG・MIG溶接に適し、割れにくいのが特長です。オーステナイト系のため、水素による低温割れの心配はなく、予熱なども必要ありません。ただし、SUS304用の溶接材料の選定は必須です。
炭素鋼との溶接では、混合部がマルテンサイト化して割れの懸念が出てきますので、309系の溶接材料を使用してください。
溶接後は組織の鋭敏化を避けるため、応力除去焼鈍は行ってはならず、固溶化熱処理の実施が推奨されます。
9.SUS304の磁性について
9-1.なぜ磁石に付かないのか
ステンレスも鉄(Fe)を大量に含んでいますが、常温でオーステナイト組織のため、基本的に非磁性です。
9-2.加工後に磁性が出る理由
冷間加工による加工誘起変態によりオーステナイトの一部がマルテンサイトに変態する場合があります。マルテンサイトになると磁気を帯びるため、磁性が発生します。
10.SUS304と他ステンレスとの違い
10-1.SUS304とSUS304Lの違い
SUS304LはSUS304より主に炭素量を下げた(0.030%以下)ものです。炭素が高いと溶接熱でクロムと結合してクロム炭化物が生成して粒界の耐食性を下げますが、これが発生しにくくなります。溶接後の固溶化熱処理の代わりに粒界腐食対策として選ばれます。
10-2.SUS304とSUS316の違い
SUS316はSUS304に主にモリブデン(Mo)を2.5%程度加えたもので、塩化物イオンに対する耐食性(耐塩害性)が向上します。孔食やすき間腐食に対しても効果があります。ただし、Moも高価な元素なので、価格は高くなります。
10-3.SUS304とSUS430の違い
SUS430はCrを17%程度含有し、Niの添加をなくしたフェライト系ステンレスであり、SUS304に比べ、コストは安いが耐食性や高温強度は劣ります。磁性はあり、切削加工はしやすいと言われています。
11.SUS304の規格・形状・表面仕上げ
11-1.主な規格
- 鋼板、鋼帯:熱間圧延JIS G4304、冷間圧延JIS G4305
- 丸鋼、角鋼、六角鋼、平鋼:熱間加工JIS G4303、冷間仕上JIS G4318
- 線材:熱間圧延JIS G4308、伸線JIS G4309
- 形鋼:熱間成形JIS G4317、冷間成形JIS G4320
- 鋼管:サニタリー管JIS G3447、一般配管JIS G3448、配管JIS G3459、大径JIS G3468
11-2.主な供給形態
- 鋼板(熱間圧延で厚さ2~35mm、冷間圧延で0.30~20mmが標準)
- 鋼帯(熱間圧延で板厚2~9mm、冷間圧延で0.30~6mmが標準)
- 丸棒(熱間圧延で径9~200mm、冷間仕上げで5~100mmが標準)
- 線材(熱間圧延で径5.5~20mm、伸線で0.02~14mmが標準)
- 平鋼、角鋼、六角鋼
- 形鋼(H形、等辺山形、不等辺山形、溝形が標準)
- 鋼管(外径9.52~1016mmが標準)
11-3.代表的な表面仕上げ
- No.1:熱間圧延後、酸洗で仕上げたもの。
- No.2B:冷間圧延後、表面をさらにロールで軽く仕上げたもの。
- No.3、No.4、#240、#320、#400:JIS R6010による研磨仕上げ。#400はバフ仕上げ相当。
- BA:冷間圧延後、光輝熱処理を行ったもの。
- HL:研磨材で連続した髪の毛のような筋目が均一に入った仕上げ。
- 鏡面:バフやフェルトで鏡のように反射する仕上げ。
12.SUS304の価格動向
12-1.価格が変動する要因
- ニッケル相場:ニッケルは比較的価格変動が激しく、数年で倍以上になることも珍しくありません。
- 為替:ニッケル含め原材料はほとんど輸入のため為替レートは直接影響します。
- 需給バランス:ニッケルはステンレス合金用が大半ですが、めっき用もあり、最近ではEVの電極にも使われます。もちろん、SUS304自体の需給バランスも影響します。
13.まとめ|なぜSUS304は「万能材」と言われるのか
SUS304は、耐食性・加工性・入手性・コストのバランスに優れたステンレス鋼材です。
正しい特性理解と環境評価を行うことで、長寿命かつ安定した製品設計が可能になります。
SUS304をはじめとするステンレス鋼材のご購入を検討の際は、ぜひとも弊社クマガイ特殊鋼㈱にお声がけください!!
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