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意匠性チタン

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意匠性チタン

前回はチタン全般について書いてきましたが、かなり専門的な分野も多く、一般にはなじみのない用途も多くありました。今回はもう少し、身近なところで使われる意匠性に特化したチタンについて紹介します。


日本製鉄ではこの意匠性チタン製品を、TranTixxii®(トランティクシー)という名前で売り出し中です。


TranTixxii®は意匠性チタンのオリジナルブランド名で、日本製鉄の登録商標です。ロゴマークや意味合いは下記の通りです。

図1 TranTixxii®ロゴマーク(日本製鉄提供)
図2 TranTixxii®ネーミングコンセプト(日本製鉄HP2)より)

素材としても、これまでの鋼板などの金属素材とは一線を画す芸術的な色彩を備えた材料だと思います。


これまでの金属素材は、金、銀、銅、ステンレスなど金属固有の色はありましたが、素材そのものの色が多彩なものはほとんどありませんでした。


金属固有の色は、その金属がどんな波長の色を反射しやすいかで決まります。

  • 『銅』は、600nmより長い波長の光(橙・赤)を反射しやすいのであのような銅色になります。
  • 『金』は、550nmより長い波長の光を反射しやすいので、銅の橙、赤に黄緑、黄が加わり結果的に金色に見えています。
  • 『銀』は、すべての可視光線の反射率が高く着色しなくなります。ステンレスや鉄も銀色です。


話をチタンに戻して、通常のチタンはステンレスと同じように銀色をしていますが、チタン表面に生成させる無色透明な酸化膜(TiO2)の膜厚をコントロールすることによって色合いを作り出しているとのことです。シャボン玉の表面や虹が色付いて見えるのと同じような原理です。


図3に模式的に示すように、膜表面で反射する光と地のチタン表面で反射する光の波長が重なったものが強調され反対位相のものは打ち消されることで、膜厚によりいろいろな色が見えます。

波長の干渉で色が見えることから干渉色とも言います。あるいは、膜や表面の凹凸という微細構造によって発色して見えることから構造色とも言います。

図3 光の反射の干渉(日本製鉄カタログ1)より)

膜厚のコントロールは、陽極酸化法という方法で実施します。導電性電解液中で陽極にチタンを用い、電圧・電流・温度・時間などにより酸化皮膜の厚さをコントロールします。

図4に示すような、酸化皮膜の厚みと色の関係があり、膜厚の薄い方から灰、黄、紫、青、黄緑、黄、紫、緑と変化していきます。膜厚を厚くしていくと赤も可能と思われますが、現状は達成できていません。

図4 酸化膜厚と干渉色の関係(日本製鉄カタログ1)より)

図5に示すような、淡い黄、紫、青、緑などの色合いは、自然な安らぎを感じ、金属の冷たさを感じさせません。ふと手にしてみたくなります。鋼材に、塗装によって色を付けるのとは異なり、光の反射を利用した繊細な色合いが趣の世界を感じさせます。また、塗装ではないので、長期間色の変化が少なく、環境にも優しい素材になります。

図5 チタンの発色例(日本製鉄カタログ1)より)

なお、干渉色でも金に近い色合いは出せるのですが、さらにはっきりとした金色を出すために、TiNをチタン表面にイオンプレーティングという方法で蒸着させる方法があります。この方法によると、写真1に示すような金色が出せます。神社、仏閣に映えます。

写真1 龍王神社(熊本県)

これらの色彩に加えて、下地のチタン表面をつるつるの状態にするのか、光沢を抑えたダル仕上げと呼ばれる梨地肌にするのか、熱を加えて結晶粒を粗大化させた結晶組織にするのかなどとの組合せで色々な肌触り、質感が得られます(写真2)。

写真2 チタン表面素地の仕上げ状況(日本製鉄カタログ1)より)

このような、素地と色の組み合わせで、かなり多彩な美しさが選択できます。写真3はそのほんの一部です。個性の出せる素材ですので、最近の言葉でクールな素材と言ってもいいかもしれません。

写真3 表面素地と発色の組み合わせ例(日本製鉄HP2)より)

対象の板厚は0.3~2㎜の範囲で、高級素材という感覚でとらえてもいいかと思います。芸術の領域と言ってもいいかもしれません。当然、価格は気になるところですが、半永久的に朽ちないことを考えると、多少の価格アップは許容できるものと思いますし、贈答品としても喜ばれると思います。


素材自体がチタンなので、耐食性等は折り紙付きなのは言うまでもありませんが、他に熱膨張が少ないので熱による変形が少ないですし、熱伝導率が小さいので保温材、断熱材としてもすぐれています。


保温性も活用したタンブラー(写真4)やボトルがありますが、他にもさまざまな用途が開発されています。一般家庭でも、表札、看板、エントランス、バーカウンター、キッチンなどの外装材、内装材などにも耐食性とともに意匠性を発揮します。


こんなものがないか?というものがありましたら、ぜひ一報ください。

保温性も活用したタンブラー(写真4)やボトルがありますが、他にもさまざまな用途が開発されています。一般家庭でも、表札、看板、エントランス、バーカウンター、キッチンなどの外装材、内装材などにも耐食性とともに意匠性を発揮します。

写真4 タンブラー(イメージ)

神社仏閣の屋根材や外装材、屋内の壁材、木材代替などにも、これまでに多くの使用実績があります。色合いもレインボーカラーというよりも、緑青に似せたものや銀色のまま素地をブラストしたものなど適用箇所に見合った風合いが醸し出せます。(写真5)

写真5 北野天満宮

沿岸部でも腐食の心配はありません。フジテレビ本社の球形展望台、名古屋港水族館など沿岸部にある施設にも多数適用されています。

名古屋港水族館

このように、意匠性チタンは身近な製品から荘厳なものまで、広く適用が可能で、広がりは留まることはありません。こんなものに適用したいというアイデアがありましたら是非ご連絡をお待ちしております。


今回の記事にあたり、下記日本製鉄のHP2)を参考にさせていただくとともに、図表、写真の多くは日本製鉄株式会社の許可を得て掲載させていただいています。ここに、改めて感謝申し上げます。

日本製鉄のカタログ1)、HP2)もご覧いただき、チタンについて興味を持っていただければ幸いです。

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