チタンの加工方法(切断、プレス、溶接など)・用途について vol.2
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vol.1では、素材としてのチタンについて、種類や特徴、性質について解説いたしました。今回は、切断や曲げ、溶接などの加工と具体的な用途について解説していきます。
チタンの切断
チタンの切断は、レーザー切断、ワイヤカット、シャー切断などがあります。板厚が薄い場合はシャー切断されますが、それ以外はレーザー切断が一般的です。
ワイヤカットも可能ですが、チタンの融点が高いこと、温度が上昇しやすいこと、断面が酸化して硬化することなどの事象のため、ノウハウが必要です。
チタンの加工
:プレス・曲げ
チタンをプレスやベンダーで曲げ加工する場合、鉄鋼に比べスプリングバックが大きいので調整が必要です。特に高強度材で顕著です。
チタンをプレス成形する場合、純チタンでは加工硬化指数(n値)が低く加工硬化しにくいのと、ランクフォード値(r値)が一般の鋼材よりも大きいため、絞り加工しやすくなっています。(ただし、鋼材には深絞り性を改善したIF鋼というものがあり、延性・降伏応力・結晶構造の点から、これには及びません。)
チタンは焼き付きを起こしやすいので、潤滑をどのようにするかも重要です。形状によっては、不活性ガス中での温間加工などのノウハウがあるようです。また、プレス成形の際、上記曲げ加工と同じようにスプリングバックによる変形の調整が必要です。
:切削
チタンの切削加工は、SUS304レベルで良くはありません。SUS304と同じように熱伝導率が低いため、摩擦熱で温度が高くなりやすいのと、温度が上がるとチタンが工具と熱化学反応してしまい工具を損傷させてしまうためです。
工具は超硬合金が使われます。チタンは塊の状態では表面が酸化物で覆われ不燃性材料ですが、切粉や切削くずは酸化反応で発火しやすいため注意が必要です。
チタンの溶接
チタンは融点が高めで酸化しやすいため、溶接は注意が必要です。
主な溶接法はTIG溶接です。空気中の酸素・窒素等と反応すると脆化や延性の低下が起こるので、アルゴンガスによるシールド(空気の遮断)は重要です。
また、合金チタンでは、溶接後の冷却条件により、相変態の挙動が変わるので、溶接後熱処理が必要な場合もあります。
チタンと他の金属(鉄鋼)との溶接は、溶融部に金属間化合物ができてしまい、脆化するのでできません。
このようにチタンの溶接は、特別な技量が必要であり、チタン溶接技能者を有する専門業者に依頼する方が無難かもしれません。
チタンの用途例
チタンの用途について改めて記載します。
航空宇宙分野
主な用途は、航空宇宙分野です。軽くて強度があり比強度に優れているのに加え、機体用には低温での靭性も必要ですし、エンジン部品には逆に高温での特性も重要になります。コックピット窓枠、シートレール、ファンブレード、ファンケース、コンプレッサーブレード、ランディングギアなどに使用されています。性能を重視した軍用機ではより多く採用が進んでいます。


産業プラント分野
次の用途としては、産業プラントがあります。中でも、化学プラントでは腐食に対して有効ですし、熱交換器などで海水を使う場合には特に有効です。海水淡水化装置、発電所復水器、電解槽などにも適用されています。

自動車分野
自動車、二輪分野でも軽量、高比強度、耐食性などを活かして、コンロッド、エンジンバルブ、マフラー、燃料タンクなどに使われています。

建材分野
建材分野では発色が可能な意匠性と高耐久性などを活かして、海浜地区を含めた建築物の外壁、神社仏閣の屋根などに使われています。土木分野では、海岸部の腐食対策にカバープレートとして鋼材を守るような使われ方もあります。


医療分野
医療分野では生体適合性も活かして、人工骨、インプラント、脊椎固定器具、心臓ペースメーカー、人工弁、手術器具などに使われています。
民生用
民生用としては、メガネフレーム、自転車フレーム、ポット、コップ、カメラ、ゴルフクラブヘッド、腕時計など身近なものに使われています。


以上、チタンの加工方法(切断、プレス、溶接など)、用途について紹介をしてきました。
vol.2 まとめ
次回vol.3は、建材や民生品に使われる意匠性チタンに特化して詳しく紹介します。
日本製鉄のカタログ1)、HP2)もご覧いただき、チタンについて興味を持っていただければ幸いです。
1)T001_チタン
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